インド工科大学マドラス校(IIT-M)は10月28日、バイオテクノロジーと先進的倹約型イノベーション(advanced frugal innovations:AFI)の統合による持続可能な製造・製品開発の方向性を整理した研究成果を発表した。研究成果は学術誌Technovationに掲載された。
AFIは、少ない資源で高品質な機能を実現するよう設計された先進的な倹約技術であり、インドに根付いているジュガード (Jugaad)や草の根倹約型イノベーション(grassroots frugal innovations:GFI)とは異なり、最先端の科学技術を用いてエンジニアや研究者が設計する工学的アプローチと位置づけられる。卓上粒子加速器や高性能望遠鏡といった例に加え、低コスト四足歩行ロボットや低価格MRI、1ドル補聴器、手動洗濯機など、多様な製品が既に実用化されている。
バイオテクノロジーは、汚染処理に利用する微生物や化学肥料代替となる農業用途など、再生可能でリサイクル性が高い技術が多く、環境フットプリントに優れる場合が多い。論文では、こうした特性を持つバイオテクノロジーをAFIと統合することで、材料と設計の両面から持続可能な製品づくりを加速できると指摘する。目的は、材料とエネルギーの使用量を削減しつつ、性能と価格を両立させることにある。
具体的な統合の方向性として、バイオマテリアルによる従来材料の代替、バイオ由来材料の特性を生かした新しい製品設計、生物学的・バイオベース接着技術による分解や廃棄の容易化の3点が挙げられている。しかし、現在のところバイオテクノロジーとAFIを組み合わせた代表的成功例は少なく、既存産業構造との相互依存や、市場や企業側の認知不足、規制・標準の制約などが普及の障壁になっているという。
インドのアミット・クマール・ドゥイヴェディ(Amit Kumar Dwivedi)博士は、バイオテクノロジーとAFIの組み合わせによる環境上の利点を評価し「起業家は潜在的にリスクのあるビジネスチャンスを認識し、それを実行する能力を持たなければならない」と言及している。IIT-M工学デザイン学部のバルクリシュナ・C・ラオ(Balkrishna C. Rao)教授は、著書で気候変動や貧困といった課題に対応するためにも、多くの産業分野でAFIの重要性を訴えている。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部