2025年12月
トップ  > インド科学技術ニュース> 2025年12月

低侵襲で手頃な価格の血糖測定装置を開発 インド工科大学マドラス校

インド工科大学マドラス校(IIT-M)は11月6日、糖尿病患者向けに費用対効果が高く、使いやすく、低侵襲の血糖測定装置を開発したと発表した。

糖尿病はインド国内で1億1千万規模の有病者がいるとされる。血糖値測定に最も一般的に使用されている自己血糖測定(SMBG)では指先への穿刺を1日に複数回行う必要がある。持続血糖モニタリング(CGM)は指先を何度も刺さずにリアルタイムで血糖値を測定できるため利便性が高いものの、高コストやスマートフォンなど外部機器への依存が課題となっている。IIT-Mはこれらの問題を解決するため、再利用可能な電子部品と低電力の表示ユニット、使い捨てマイクロニードルセンサーパッチを組み合わせた新型CGMを開発した。

新技術はIIT-M電子材料・薄膜ラボのパラシュラマン・スワミナサン(Parasuraman Swaminathan)教授が率いるチームによるもので、一連の要素技術は国内特許2件と国際PCT出願1件で保護されている。患者はパッチを見るだけで血糖値を確認でき、外部デバイスや読み取り端末を必要としない。電気熱変色性ディスプレイは測定値更新時のみ電力を消費するため、省エネルギーでバッテリー寿命が長いという特徴がある。

同教授は「研究室の成果が人々の生活の改善につながることが最大の成功です。毎日の指先の痛みを減らし、血糖管理を安定させ、長期的合併症を防ぐ可能性があります」と述べた。また、起業家育成プログラムで本開発に参加するL・バラムルガン(Balamurugan)氏は「痛みがなく目立たず、手頃な価格の装置は、より頻繁な測定を促し、緊急事態や通院の減少につながります。国産CGMは医療技術の自立にも寄与します。また、輸入デバイスへの依存を減らすことで、インドでの製造と雇用の機会も創出します」と語った。

研究は当初から社会実装を見据えて進められ、3つの戦略的方針が示されている。まず、IIT-Mリサーチパークを拠点としたスタートアップによる商業化、次に医療機器メーカーとの技術移転、さらに外部組織との戦略的ライセンス供与である。

現在、表示モジュールの機能試作機が完成し、検知精度や信号安定性を確認するベンチテストを終えている。今後は臨床検証、製造準備、規制承認取得、実環境下での耐久性試験を進める予定である。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

上へ戻る