インド理科大学院(IISc)は、IISc高エネルギー物理学センター(CHEP)の研究チームが、数学者シュリニヴァーサ・ラマヌジャン(Srinivasa Ramanujan)が1914年に発表した円周率πを計算する数式が、現代の高エネルギー物理学の理論と共通の数学構造を持つことを明らかにしたと発表した。研究成果は学術誌Physical Review Lettersに掲載された。
ラマヌジャンは、πの多くの小数桁を高速に求められる17の数式を示した。これらの数式は非常に効率的で、当時の他の方法より早く円周率を計算するのに役立った。また、数式が基礎的なものであるため、円周率を計算するための現代の計算および数学的手法、さらにはスーパーコンピューターで使用される手法の基礎ともなっている。CHEPの研究チームは、こうした驚異的な公式がなぜ成り立つのかを物理学の観点から探り、数式の出発点が何らかの物理現象に存在するかを研究した。
その結果、ラマヌジャンの数式は、共形場理論の一種である対数共形場理論の中で自然に現れることが分かった。共形場理論は、拡大や縮小をしても性質が変わらない「スケール不変性対称性」を持つ系を記述する理論であり、水の臨界点における相転移、媒体中の物質の広がりを扱うパーコレーション、流体の乱流発生、ブラックホールの特定の理論的記述などに用いられている。
研究チームは、ラマヌジャンの公式の背後にある数学的構造が、これら対数共形場理論の基盤となる数学に現れることを示した。この対応関係を利用することで、理論中に現れる特定の量を効率的に計算でき、乱流やパーコレーション現象の理解を深める手がかりになる可能性があるという。
筆頭著者で元IISc博士課程学生のファイザン・バット(Faizan Bhat)氏は、美しい数学にはそれを映し出す物理系がほぼ必ず存在し、ラマヌジャンの動機は純粋に数学的なものだったかもしれないが、それと知らずにブラックホール、乱流、パーコレーションなどを研究していたのだと説明した。
(2025年12月3日付発表)
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部