インド理科大学院(IISc)は1月9日、結核菌(Mycobacterium tuberculosis:Mtb)がゲノムに侵入した外来DNAの影響を抑え込む分子機構を明らかにし、新たな薬剤の開発に役立つ可能性があると発表した。研究成果は、学術誌Nucleic Acids Researchに掲載された。
研究チームは以前、Lsr2と呼ばれるタンパク質が、Mtbが他の生物に感染するために非常に重要なタンパク質であることを明らかにしている。本研究では、このLsr2がMtbのゲノム内に挿入されている外来DNA由来のタンパク質産生を抑制していることを発見した。外来DNA由来タンパク質は、自身の機能に支障をきたす可能性があり、細胞がこれらの遺伝子を識別し、その発現を阻止するのは重要なメカニズムだ。
研究チームは、Lsr2がアデニン(A)とチミン(T)という塩基配列に富むDNA領域に広く結合することを見いだした。Mtbゲノムはグアニン(G)とシトシン(C)という塩基が多く、外来遺伝子はAとTが多く含まれていることが知られている。Lsr2分子は高密度で集まると互いに結合し、DNAとともに凝縮体を形成することを発見した。この凝縮によってDNAは強く圧縮され、転写装置がアクセスできなくなり、ATに富む領域に存在する外来遺伝子の発現が効果的に抑制される。
さらに単分子イメージング、コンピューターシミュレーション、顕微鏡観察を組み合わせた解析により、Lsr2の一部の領域がタンパク質同士の結合を担い、別の領域がDNAへの結合を担うことも明らかになった。研究で使用された手法の1つは、ガラス板の上にDNAを伸ばすことで、DNA鎖を画像化するもので、オランダのデルフト工科大学でポスドク研究員として研究していたIISc生化学科のマヒパル・ガンジ(Mahipal Ganji)准教授が開発したものだ。
研究チームは、Lsr2の凝縮形成を阻害できれば、結核菌が宿主へ感染することを阻止するためのアプローチとなる可能性があるとしている。今後は他のタンパク質とLsr2の相互作用についても解析を進める予定だ。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部