英国などの国際研究チームは、コレラの世界的拡散について、従来はバングラデシュを中心とするガンジス川デルタが主な発生源とされてきたが、ゲノム解析によりインドが主要な供給源である可能性を示した。科学誌nature indiaが 4月1日に伝えた。研究成果は学術誌Natureに掲載された。
研究者らは、バングラデシュおよびインド北部で採取されたコレラ菌(Vibrio cholerae)2300件以上のゲノムと世界のデータを統合解析し、感染拡大の仕組みを検証した。その結果、コレラ拡散の原動力はバングラデシュ単独ではなく、より広域なガンジス川流域全体にあることが示された。とりわけ、インドがパンデミック株の主要な輸出源として機能している可能性が示唆された。
両地域の比較では、コレラ菌は相互に移動しているものの、バングラデシュ国内で循環する系統は過去20年間にわたり比較的孤立して進化していた。これらの系統では、細菌に感染するウイルス(バクテリオファージ)に対する防御に関与する可動性DNA要素において、遺伝的構成の急速な入れ替わりがみられた。特に、こうした要素の一つであるPLE抗ファージアイランドは生物学的な障壁として働き、BD1やBD2といった系統の国際的な拡散を抑えていると考えられる。
一方、こうした制約を欠くことが多いインドの系統は、世界各地へ広く拡散している。また、バングラデシュでは一部のファージ防御機構の喪失がより重篤な感染と関連し、患者における菌量の増加が観察されたことから、感染の広がりやすさと病原性の強さの間にトレードオフが存在する可能性が示された。
さらに本研究は、コレラ拡散の主因が河川環境における混合ではなく、人の移動や人口動態である可能性を示唆する。研究者らは、現在も続く第7次コレラ・パンデミックの終息には、アフリカや中東などの流行地域に加え、ガンジス川流域内の感染ホットスポットを対象とした監視およびワクチン戦略の強化が重要であると指摘している。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部