インド理科大学院(IISc)は4月16日、同大学院の研究者らがセンチメートルスケールのウエハー上に高品質な2次元磁性材料(2D-MMs)を成長させる手法を開発したと発表した。研究成果は学術誌Advanced Materialsに掲載された。
2D-MMsは単一原子層でも磁性を保持できる材料である。既存の機械的剥離法は、バルク材料から層をはがして微小なフレークを得る手法で、研究用途には適するが、技術応用に必要な大面積製造には向かない。一般に蒸着法では前駆体の蒸気を高温表面に通し、基板上で原子を再配列させて薄膜を形成するが、2D-MMsでは成長時のごく小さな欠陥でも原子構造や磁気特性が損なわれるため、ウエハースケールでの製造は難しかった。
IISc物理学部のアクシャイ・シン(Akshay Singh)助教授らは、代表的で物理的に豊かな磁気秩序を持つ塩化クロム(CrCl3)を材料として選び、新たにPhysical Vapour Transport Deposition(PVTD)と名付けた手法を用いて成長させた。材料を加熱して気化させ、表面に再堆積させるこの手法において、研究チームは不要な放射加熱の低減、従来より大幅に高いキャリアガス流量、成長中の材料供給の動的制御、酸素と水分の徹底除去という4つの工夫を導入した。成長チューブをアルミホイルで覆って炉の発光の影響を抑え、チャンバー内部を暗くし、酸素・水分対策用のフィルターやチューブ端部のカップリングも設けた。
基板としては二酸化ケイ素やサファイアも試したが、表面に未結合手を持たず結晶性に優れる合成雲母が最適だった。さらに非常に高いキャリアガス流量を用いることで、一体化し平滑な薄膜を得た。研究チームは薄膜を異なるパターンで成長させ、他基板へ転写することにも成功しており、電子デバイスへの実装に向けた道を開くことを示した。
加えて、密度汎関数理論計算と機械学習分子動力学に基づく大規模シミュレーションから、フッ素化雲母が拡散と秩序ある鎖形成を促し、CrCl3成長の鍵となることも明らかにした。同助教授は「この手法は空気や光に敏感な他材料にも適用可能です」と述べた。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部