インド科学技術省(MoST)は5月20日、同省傘下のアリャバッタ観測科学研究所(ARIES)とインド工科大学デリー校(IIT-D)の研究者らによる、太陽外層大気のコロナに潜む乱流を検出する新たな方法につながる研究を発表した。研究成果は学術誌The Astrophysical Journalに掲載された。
太陽コロナは、太陽の可視表面よりはるかに高温である理由が長年の謎とされる。コロナには、磁気構造に沿って伝わる波で揺れ動く構造があり、その代表例が伝播性の横方向磁気流体力学(MHD)波である。この波はキンク波などとされ、外向きに進みながらコロナ構造を横に振動させる。分光観測では、プラズマが観測者に近づいたり遠ざかったりすることで、赤方・青方へのドップラーシフトを交互に生じさせることが知られる。一方で、この波がスペクトル線を赤側または青側に偏らせるかは、観測上不明だった。
ARIESの博士課程学生アンビカ・サクセナ(Ambika Saxena)氏と、IIT-D物理学科のバイバフ・パント(Vaibhav Pant)教授は、横断面に密度の不均一性を持つ開いた磁場領域を対象に、三次元MHDシミュレーションとフォワードモデリングを行った。下部境界で横波を駆動し、構造化された磁場に沿って上方へ伝播させ、Fe XIII 10749Åのスペクトル線でプラズマ発光を計算した。
シミュレーションでは、横波が構造化された磁気プルームに沿って進む際、プルーム内部のプラズマは一様には動かず、密度変化のある断面で位相混合が進むことが示された。この過程で乱流が発達し、磁気構造内に小規模な速度・密度構造が生じた。太陽コロナは光学的に薄いため、視線方向に重なる発光が合成され、スペクトル線は完全な対称形ではなく、波の伝播に伴い青側または赤側に偏った形が交互に現れる。
研究では、こうした非対称性が横波の力学、断面の不均一性、波に駆動される乱流から自然に生じることを確認した。非対称性は線ピーク強度の約20%に達し、見かけの二次速度は30~40km/sとなった。研究者らは、伝播性の横方向MHD波だけで、系統的なスペクトル非対称性を生じ得ると指摘する。米国の太陽望遠鏡DKISTなどの高空間・高スペクトル分解能を持つ施設により、この現象の観測が近く可能となり、太陽コロナの波駆動ダイナミクスの診断手法になり得るとしている。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部