2026年07月
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量子カオスで量子シミュレーションの誤差が広がる仕組みに迫る IITマドラス校

インド工科大学マドラス校(IIT-M)は6月9日、同大学の研究者らが、量子カオスの兆候と、系統誤差の下での量子シミュレーションへの影響を調べたことを発表した。研究成果は学術誌Chaosに掲載された。

量子コンピューターや量子シミュレーターは、熱、電磁干渉、振動など外部環境からの擾乱に敏感で、これらはまとめてノイズと呼ばれる。現在の量子コンピューターは、ノイズのある中規模量子(NISQ)デバイスであり、誤差が生じやすい。研究チームは、量子系の動力学に摂動を加えたとき、カオスが情報の急速なスクランブリングと、システム全体にわたる系統誤差の広がりをどのように引き起こすのかを検討した。

研究を行ったのは、IIT-M物理学科と量子情報・通信・コンピューティングセンターのアビナシュ・サフ(Abinash Sahu)博士、ナガ・ディリープ・バリクティ(Naga Dileep Varikuti)博士、ヴァイバフ・マドホック(Vaibhav Madhok)教授である。バリクティ博士はイタリアのトレント大学物理学科などにも所属している。研究では、量子カオスの指標であるロシュミットエコー(LE)と、情報の広がりを測る時間外順序相関子(OTOC)に着目した。特に、系統誤差が量子系全体に広がる過程を捉える「エラーOTOC」を用い、LEとの関係を連続弱測定トモグラフィーによって示した。

この手法は、情報や系統誤差が量子系全体に広がる様子を実験で捉えることが難しい中、既存実験に簡単な変更を加えるだけで、系の単一ショットの順方向時間発展から検証できる可能性を示す。ルクセンブルク大学のアドルフォ・デル・カンポ・エチェバリア(Adolfo DEL CAMPO ECHEVARRIA)教授は、同成果について、エラーが時間とともに広がり増大する様子を特徴付ける新しい手段を実験研究者に提供し、ブラックホール物理学からNISQデバイスによる量子計算まで幅広く関係すると評価した。また、フォールトトレラント量子計算の多くを支える「誤差は局所的に生じる」という仮定にも疑問を投げかけると述べた。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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