インドのアーメダバードの物理研究所(PRL)の研究者らは、月の南極付近の二重に影となったクレーターに地下氷が存在する可能性を、インドの月探査機チャンドラヤーン2号のレーダーデータから示唆した。科学誌nature indiaが6月9日に伝えた。研究成果は学術誌npj Space Explorationに掲載された。
月の南極には、数十億年にわたり太陽光が届かず、温度が零度をはるかに下回る永久影のクレーターがある。今回研究チームが着目したのは、月の南極付近の大きな盆地の内部にあり、隆起した縁が周囲の地形からのかすかな散乱光や熱放射も遮る「二重に影となったクレーター」である。このため、温度は25Kまで低下するという。
アニル・バルドワジ(Anil Bhardwaj)氏とリシトシュ・シンハ(Rishitosh Sinha)氏が率いる研究チームは、チャンドラヤーン2号に搭載された高度なレーダーを用い、ファウスティーニ、ハワース、シューメーカー各クレーター内にある9つの二重に影となったクレーターを調べた。地下氷の手掛かりとなる円偏波比(CPR)を解析し、岩石の多い月面でも似た信号が出るため、第2の診断指標として偏光度(DOP)も用いた。
その結果、CPR値が1を超え、DOP値が低い4つのクレーターを特定した。ファウスティーニ内の幅約1.1kmのクレーターでは、レーダーで観測された偏波信号の増強に加え、葉状に張り出した縁という明瞭な地質学的特徴も見られた。これは、過去の衝突で氷を含む物質が掘り起こされ、縁の崩壊や凍結の過程が変化し、特異な構造が残された可能性を示している。
こうした観測結果とレーダーデータの組み合わせは、通常の月面地形ではまれである。研究チームは、レーダー波が埋没氷を含む多孔質の混合物の中を伝わって反射していた場合に限り、このような現象が起こり得ると指摘している。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部