2026年08月
トップ  > インド科学技術ニュース> 2026年08月

火の手が上がる前にヒマラヤの森林火災を予測、水分喪失に着目 インド

インドのバナラス・ヒンドゥ大学とインド工科大ボンベイ校(IIT-B)などの研究者らは、森林の燃えやすさは気温だけでなく水分の喪失に強く左右され、土壌水分や大気の乾燥度などを監視すれば、ヒマラヤの森林火災を発生前に予測できる可能性を示した。科学誌nature indiaが7月23日に伝えた。

ヒマラヤの生態系では、米国西部などで見られる長期的な干ばつと可燃物蓄積の典型的なパターンは確認されない。ヒマラヤ中部・東部では、高い蒸発量や植物の脱水を伴う短期間の急激な水分不足が、火災の広がりを左右する。IIT-Bの研究者らが2001~2016年の衛星データを分析したところ、空気が土壌や植生から水分を奪う強さを表す飽差(VPD)が、降水量や気温を考慮しても、焼失面積を予測する最も強い指標だった。

バナラス・ヒンドゥ大学のティルタンカル・バネルジー(Tirthankar Banerjee)氏らは、統計手法と機械学習を用い、土壌水分と大気の乾燥度の監視によって火災予測を大幅に改善できることを明らかにした。一方、インドの森林研究所のアミット・ベルマ(Amit Verma)上級技術官らは、ヒマラヤ西部の火災が気候、地形、人為的要因の組み合わせで生じ、乾燥したモンスーン前に最も多いことを突き止めた。人間活動が主な着火源だが、小さな火花が大規模火災に発展するかどうかは林床の乾燥度に左右されるという。

インド森林調査局(FSI)は、気象から推定した可燃物の含水率と火災挙動を組み合わせ、25km2の森林区画ごとに危険度を分類している。しかし、現在使用する衛星は火災発生後しか検出できず、一つの火災を複数の事象として捉える場合もある。FSIは、煙や雲、厚い林冠を通して土壌水分や可燃物密度などを10~20m単位で観測できる米航空宇宙局(NASA)・インド宇宙研究機関(ISRO)の合成開口レーダー衛星NISARのデータ利用を検討している。

ベルマ氏は「冬季の降雨不足、降雪量の減少、長い乾燥期間により、ヒマラヤの森林は火災に対して一層脆弱になっています」と指摘する。最初に燃えることが多い林床の落葉落枝の含水率を監視し、脆弱性マップや可燃物量の評価、気候に基づく火災リスクモデルと計画的な火入れを組み合わせれば、火災を防ぐ有力な手段になるとしている。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

  • アジア・太平洋総合研究センター
  • Science Japan
  • 客観日本
上へ戻る