2026年08月
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電流で強磁性と反強磁性を可逆切替する極低温メモリー素子を作製 インド

インド理科大学院(IISc)は7月30日、同大学院の研究者らが、複合酸化物を電流によって強磁性状態から反強磁性的状態へ可逆的に切り替え、2つの安定した抵抗状態を持つナノスケールのトンネルデバイスを作製したと発表した。研究成果は学術誌Nature Communicationsに掲載された。

多くの磁気メモリー技術では、材料の磁化の向きを変えている。これに対し研究チームは、複数の磁気状態を取り得る複合酸化物Sm1−XSrXMnO3を用い、磁化の向きを単に反転させるのではなく、材料自体を一つの磁気状態から別の状態へ変化させた。電流が小さいとき、原子の磁気モーメントは大部分が同じ方向にそろった強磁性状態にあり、電流が流れやすく抵抗は低い。

しかし、印加電流が臨界値を超えると、隣り合う磁気モーメントが反対方向を向く傾向にある反強磁性的状態へ急激に切り替わり、抵抗は大幅に高くなった。この電流駆動転移は可逆的で、長距離強磁性秩序の消失と電子軌道の再配列を伴うため、通常の加熱や従来の電流駆動による磁化反転とは異なるという。

研究チームが同材料で約250nm四方のトンネルデバイスを作製したところ、磁気抵抗比が200%を超える2つの安定した抵抗状態を示した。切り替えは電流、温度、磁場で制御できる。この効果は低温で最も強いため、通常は極低温で動作する量子コンピューティング基盤を支えるメモリーや論理回路への応用が期待される。

研究を主導したIISc材料工学科のバグワティ・プラサド(Bhagwati Prasad)助教授は、「根本的に新しい点は、電流が単に磁化を回転させるのではなく、材料自体の磁気相を変えることです。これにより、極低温メモリー・論理技術に役立つ可能性のある、明確に区別できる2つの抵抗状態が得られます」と語った。筆頭著者で博士課程学生のスーリヤカンタ・モンダル(Suryakanta Mondal)氏らは今後、切り替えに必要な電流とエネルギーの低減、動作温度域の拡大、大規模な極低温メモリー・論理回路への統合に取り組む。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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