インド科学技術省(MoST)は8月6日、同省傘下のボーズ研究所の研究者らが、量子ネットワークの中継点を切り離さず、従来より弱い初期量子もつれでも長距離量子通信を可能にする新手法「General Concurrence Percolation(GCP)」を提案したと発表した。研究成果は学術誌Physical Review Aに掲載された。

GCPの枠組みの動作フロー。局所的な幾何学ルーティングを用いて、量子もつれの弱い既存リンクを最適化する。これによりGCPは、既存のプロトコルで生じるノードの孤立や削除といった望ましくない結果を回避し、より強い量子もつれを持つ、堅牢で持続性の高い量子ネットワークを形成する。
(出典:PIB)
量子ネットワークでは、安全で効率的な情報伝送のため、離れた地点間に最大もつれ状態を形成する必要がある。しかし、実験で最大もつれ状態を生成、維持することは難しく、現実環境のノイズによって接続が絶えず弱まる。そこで、量子力学と統計物理学のパーコレーション理論を組み合わせ、弱い接続が大半を占めるネットワーク内に強い接続を形成する手法が研究されている。
従来の手法の多くは、ネットワーク内の中継点を順次切り離して強い接続を形成するため、貴重な資源を消費し、ネットワーク本来の構造を変えてしまう。コルカタのボーズ研究所のディープ・ナート(Deep Nath)博士とソウメン・ロイ(Soumen Roy)教授が考案したGCPは、これとは異なる幾何学的アプローチを採用している。
GCPは、量子もつれの尺度であるコンカレンスを利用し、最短経路に沿って量子もつれを増幅する。中継点を切り離さないため、まばらに接続された物理ネットワークを、より強い量子もつれを持つ高密度なネットワークへと変換できる。研究チームは、従来必要と考えられていた水準より弱い初期量子もつれでも、長距離量子通信を確立できることを示した。
コンピューターシミュレーションでは、ネットワーク全体の接続に必要な量子もつれの水準が、既存手法に比べて低くなることを確認した。また、GCPでは、ネットワークが全体に広がる大規模な接続状態へ移る際の変化が、通常のパーコレーションと同じ法則に従うことも示され、量子もつれパーコレーションの理論的基盤が強化された。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部