2026年09月
トップ  > インド科学技術ニュース> 2026年09月

在外科学者呼び戻しへ大型研究資金制度開始、構造的課題には懸念も インド

インドは、米国の科学研究費削減が研究者の国際移動に影響する中、国外のインド系科学者を呼び戻す大型資金制度を相次いで始めたが、専門家は資金不足や官僚的手続きなどの構造的問題は解消されないと指摘していると、科学誌nature indiaが8月10日に伝えた。

インドは6月、今後5年間で少なくとも120人を国内の主要大学・国立研究所に招く「首相研究チェア制度」を開始した。対象者は人工知能(AI)、半導体、量子技術、バイオテクノロジー、医療、気候科学、エネルギー、先端材料のプロジェクトを率い、キャリア段階に応じて5年間で3300万~1億4250万ルピー(34万5000~140万ドル)を受け取る。

スダ・ムルティ(Sudha Murty)氏と夫のナラヤナ・ムルティ(Narayana Murty)氏が運営するムルティ・トラストも「ムルティ科学フェローシップ」を設けた。5年間で最大5000万ルピー(50万ドル)を、人材採用、国際会議への出席、研究室移転、高リスク研究などに柔軟に使える。同トラストのネハ・パンコウ(Neha Pankow)ディレクターによると、欧米で働くインド人研究者の共通の懸念は、帰国後も同様の科学研究を続けられるかであった。

国立生物科学センターの神経科学者アビラシャ・ジョシ(Abhilasha Joshi)氏は、科学者の採用手続きが体系化されず、募集分野も不透明で、ポスト自体が限られると指摘した。ドイツと米国で勤務後に帰国したインド工科大カーンプル(IIT-K)のアルン・シュクラ(Arun Shukla)教授も、試薬購入を遅らせる政府調達制度の見直しが必要だとした。

インドの2024年の研究開発投資は国内総生産(GDP)比約0.8%で、中国2.69%、韓国5.3%、米国3.4%を下回る。インド理科大学院(IISc)のゴビンダン・ランガラジャン(Govindan Rangarajan)学長は、慈善資金は従来型の資金を得にくい野心的で高リスクの研究を支援できると説明した。

一方、同教授は「基礎研究を十分に支援しなければ、何を土台に築くのでしょうか。自由な発想に基づく研究から離れれば、科学分野でノーベル賞を得るというインドの目標をどう実現するのでしょうか」と問いかけた。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

  • アジア・太平洋総合研究センター
  • Science Japan
  • 客観日本
上へ戻る