インド科学技術省(MoST)は8月19日、科学技術庁(DST)傘下の先端科学技術研究所(IASST)とインド工科大学グワハティ校(IIT-G)の研究者らが、主にがん細胞内で活性化し、健康な細胞には害を与えないよう設計した新たな「スマート」がん治療薬RK-251を開発したと発表した。研究成果は学術誌Journal of Medicinal Chemistryに掲載された。

がん細胞内でのみ活性化して作用するよう設計された新たな「スマート」がん治療薬の模式図
(出典:PIB)
がん治療では、がん細胞とともに健康な細胞も損傷することが多く、それに伴って重大な有害作用や副作用が生じる。このため、体内を移動している間は正常組織で不活性な状態を保ち、腫瘍部位で特異的に活性化する標的治療が求められている。RK-251は、この仕組みにより従来の化学療法に代わる可能性がある。
研究は、IASSTのアシス・バラ(Asis Bala)博士と、IIT-GのK・P・ババク(K.P. Bhabak)博士が主導した。がん細胞は、有害な分子である活性酸素種(ROS)を高濃度で生成することが多い。RK-251ががん細胞に入ると、高濃度のROSによって活性化され、強力な抗がん化合物NBDHEXを放出する。NBDHEXは、多くのがん細胞が生存し、治療に抵抗するために利用する標的タンパク質を阻害する。
前臨床研究では、RK-251は悪性度の高いトリプルネガティブ乳がん細胞に強い活性を示す一方、健康な細胞への影響ははるかに小さかった。また、ゼブラフィッシュ(Danio rerio)胚を用いた候補薬の挙動研究では、明らかな毒性の兆候は認められず、ROSの存在下で意図した蛍光を示した。この結果は、同薬について今後の研究と検証を進められる可能性を示唆している。ただし、この技術を患者に対して試験するには、さらなる研究が必要である。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部