インド理科大学院(IISc)バンガロール校とデンマーク工科大学の研究チームは、インドのコブラ類の主要な毒素を中和する5成分の合成抗体カクテルを開発し、マウスへの毒注入から最長20分後でも死亡を防いだ。科学誌nature indiaが9月9日に伝えた。
ヘビ毒は複数の毒素が協働し、痛み、炎症、多臓器不全や死亡を引き起こす。同じ地域の同一種でも毒素が大きく異なるため、治療が困難である。インドでは年間140万件を超えるヘビ咬傷が生じる可能性があるが、利用できる抗毒素は1種類で、インドで最も毒性が強いとされるシンドクレイト(Sindh krait)では、迅速な治療と抗毒素の複数本投与でも救命できない場合がある。
共同研究責任者でIIScの進化生物学者カーティク・スナガー(Kartik Sunagar)氏は、デンマーク工科大学のアンドレアス・ラウステン(Andreas Laustsen)氏、アン・ユンガルス(Anne Ljungars)氏らと、アルパカ、リャマ、ラクダなどラクダ科動物の抗体に由来する単一ドメイン抗体「ナノボディー」を用いた組換え抗毒素を作製した。マウスで試験した結果、カクテルはモノクルコブラ、インドコブラ、西ガーツ山脈とインド北東部に生息するキングコブラ2種の毒による死亡を防いだ。毒素に共通して保存されたエピトープを標的に、毒素群全体を中和できる可能性がある。
ヘビ咬傷は世界で毎年約14万人を死亡させ、40万人に永続的な障害をもたらす。従来の抗毒素は、ウマなどに毒を注射して抗体を採取する約100年前からの方法で製造され、アナフィラキシーなどの副反応がある。今回のカクテルをヒトに安全に使用できると判断するには臨床試験が必要となる。リバプール熱帯医学校のディリーパ・エディリウィーラ(Dileepa Ediriweera)氏らは、79カ国のデータと地理統計モデルから、過少報告を補正した世界の年間被害を、毒注入210万~700万件、死亡24万7000~51万3000人と推計した。同氏は、優れた抗毒素があっても地方の病院で入手できなければ問題であり、病院の配備状況を地図化すれば不足地域を特定できると指摘した。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部