インド洋ダイポールモード(IOD)が太平洋のエルニーニョから独立して作用し、モンスーンや大陸を越えた異常気象に影響する強力な気候現象として認識されるまでの研究の進展について、科学誌nature indiaが9月10日に伝えた。
1994年の夏季モンスーン期、ジャワ島とスマトラ島付近の東部赤道インド洋で海水温が約2℃低下し、赤道海流、海上風、大気対流も大きく変動した。東京の地球フロンティア研究システムの山形俊男(Toshio Yamagata)氏らは、赤道沿いの異常に強い東風が、赤道インド洋を東向きに流れる強い表層海流「Yoshida-Wyrtki jet」を著しく弱め、両島沿岸の南東風を強めたことを突き止めた。この風が強い沿岸湧昇を起こし、蒸発冷却も加わって海水温が低下した。
一方、東部が冷えるのに対して西部インド洋では海水温が上昇し、風と対流も対応して変化していた。同システム地球変動研究所のN・H・サジ(N. H. Saji)氏らは、この東西の対照的なパターンをIODと命名した。IODは海水温、風、降雨、海面下の状態が連動する大気海洋結合現象で、エルニーニョ年、ラニーニャ年、いずれでもない年にも発生する。東進するケルビン波と西進するロスビー波が海盆を横断して信号を伝える。
モデル研究では、IODは太平洋と独立して作用し得ることや、ダーウィンの海面気圧に影響し、エルニーニョ・南方振動(ENSO)の変動にも影響を及ぼすことなどが示された。1994年には、太平洋の状態が不利だったにもかかわらず、正のIODによる水蒸気輸送がインドの良好なモンスーン降雨と関連した。1997年など強いエルニーニョの年にも、エルニーニョから予想される干ばつがIODの影響で起こらない場合があった。
IODの影響は東アフリカ、オーストラリア、スリランカ、東アジア、南米、欧州の一部に及ぶ。海洋研究開発機構(JAMSTEC)のSINTEX-Fシステムは、従来型のエルニーニョを伴わず観測史上最強級となった2019年のIODを数カ月前に予測した。JAMSTECの審議役(国際交流担当)、スワディン・K・ベヘラ(Swadhin K Behera)氏は、今後は温暖化がインド太平洋の結合システムをどう変えるかを研究することが重要だとした。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部