韓国・サウジアラビア、エネルギー・防衛産業・インフラでの科学技術協力強化に合意

2022年12月06日 アジア・太平洋総合研究センターフェロー 松田侑奈

韓国・サウジアラビア修交60周年を迎え、ムハンマド・ビン・サルマン(以下「ムハンマド」)サウジアラビア王国皇太子兼首相が11月17日来韓した。両首脳は、両国関係の科学技術及び経済の発展について意見交換を行った。

韓国の尹錫悦大統領は「サウジアラビアは韓国にとって中東地域最大の貿易相手国であり、韓国経済・エネルギー安全保障における重要なパートナーである」とし「サウジアラビアがムハンマド皇太子の主導下で『ビジョン2030』を通じ新しい未来を開こうとしている今こそが、両国関係を新たなステージに跳躍させる絶好の時期」と語った。また、両国の新成長分野に対する投資協力、巨大都市開発プロジェクト「NEOM(ネオム)」などメガプロジェクトへの参加、防衛産業での協力、水素など未来エネルギー、文化交流・観光活性化分野の協力を一層拡大・発展させていくことに期待を示した。

ムハンマド皇太子は「韓国企業はサウジアラビアの国家インフラの発展に大いに貢献しており、この過程で蓄積されてきた信頼を基盤に、『ビジョン2030』の実現に向けて、韓国との協力をより一層強化していくことを望む」とし「特にエネルギー、防衛産業、インフラ構築との3分野で韓国との協力を強化したい」と明らかにした。その具体的な内容を見ていくと、エネルギー分野での協力とは、水素エネルギー開発、炭素貯留技術、小型原子炉(SMR)開発と原発分野の人材養成における協力を指し、防衛産業分野での協力はサウジアラビアの国防能力強化に必要なハードウェアとソフトウェアにおける協力を指す。なお、インフラ分野では「ビジョン2030」の実現に向け、韓国の中小企業を含む多くの企業が積極的に参加してほしいとの期待を示した。

両首脳は今回の会談をきっかけに、両国関係を「未来志向的戦略パートナー関係」にレベルアップさせ、協力事業をより体系的に推進するため「戦略パートナーシップ委員会」を新設することに合意した。また、委員会を中心に、エネルギー・投資・防衛産業における協力、文化交流、人材交流、観光など、さまざまな分野で今後実質的な成果を出せるよう、協力を強化していくことに合意した。

周知の通り、「ビジョン2030」の核心内容は、石油中心の経済構造から脱却し、新しい産業基盤を作ることである。脱炭素、脱石油の時代を迎え、サウジアラビアは次世代の国家成長原動力の確保に注力している。サウジアラビアは韓国の製造業における強みと韓流コンテンツパワーに注目し協力を望んでいる。

韓国の企業はムハンマド皇太子の訪韓を、サウジアラビア進出のビックチャンスとして捉えている。大韓貿易投資振興公司(KOTRA)は、ムハンマド皇太子の訪韓に合わせ「韓国・サウジアラビア投資フォーラム」を開催した。当該フォーラムには、サウジアラビア進出を目指す多くの韓国企業が参加したが、これらの企業は、特に建設、エネルギー、バイオ、自動車部品、ICT、化学、食品分野に多大な興味を示した。今回のムハンマド皇太子の訪韓をきっかけに、韓国・サウジアラビア間のビジネスが活発になると、両国の経済発展や科学技術が大きく前に一方動き出すと思われる。ポストコロナにおける国際協力関係の構築に向け、世界各国が動き出している中、韓国の次のステップにも注目していきたい。

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