韓国、外国人人材を過去最多の11万人雇用予定、雇用許可制も生まれ変わる

2023年02月28日 JSTアジア・太平洋総合研究センターフェロー 松田侑奈

韓国の各産業で続く人材不足の問題で、雇用労働部、産業通商資源部、法務部が動き出した。まずは、造船産業。かつては溶接工の場合でも入国前のビザ審査にあたり、関連資格や経歴証明書、技術鑑定書等が必要とされたが、今は来韓して2年以内に提出すれば可に緩和された。おかげで多くの技能人材が来韓を希望し、法務部ではビザ審査のスピードをあげている。2月だけで新規で2千人以上の外国人人材が現場に投入される予定である。

次は、根幹産業。日本では馴染みのないワードであるが、根幹産業とは、鋳造(鋳物)、金型、成型、焼成加工、溶接、熱加工、表面処理など、あらゆる製造業の材料等を加工供給する産業を指す総称である。こちらの産業には昨年に比べ、3倍以上に外国人人材が投入される見込みである。2022年6月に公開された雇用労働部の労働力調査によると、造船産業、根幹産業、小売業、タクシー・バス業、介護保健関連事業での人材不足が深刻で、その解決策として、2023年は過去最多の11万人の外国人を受け入れる予定である。

韓国の場合、2004年より外国人雇用許可制を実施しているが、雇用許可制というのは、求人難に悩まされている中小企業が、特定の技術や資格を要しない非専門職の外国人人材を雇用できる制度である。政府は毎年、業種別にビザを発行する数をあらかじめ決め、クオータ制で雇用許可制を運営している。2023年度の場合、受け入れる予定である外国人の規模は、製造業の場合7万5,000人、農畜産業は1万4,000人、漁業は7,000人、建設業は3,000人、サービス業は1,000人、その他業種に関係なく需要により募集する枠が1万人となっている。

更に、人材不足の問題を解消するため、雇用労働部は2022年12月に雇用労働制を改編すると発表した。従来、雇用労働制で入国した外国人は、最大4年10カ月しか滞在できず、延長を希望する場合、一度帰国する必要があったため、人材育成が難しいとの指摘があったが、今回は、技術がある程度上達し、韓国語能力も備えている外国人の場合、10年の滞在が可能になった。

また、サービス業でも選択できる業種が多くなり、職業選択における制限を大幅に緩和し、外国人がより働きやすい環境になった。外国人雇用における制度やインフラも整備され、企業では、外国人雇用管理システム(https://www.eps.go.kr/index.jsp)から簡単に外国人の雇用申請ができるようになった。このようなシステムのメリットは、企業のニーズに応える同時に、外国人にも適切な保護や保障を提供し、不当な待遇を受けるケースを軽減できる点にある。

韓国も日本と同じく、人口減少や高齢化社会による人材不足に直面している。外国人の人材や労力をうまく活用するのは人材不足解消における重要なポイントであり、そのためには、外国人のビザ制度の改善や働きやすい環境づくりが大事である。韓国雇用労働部のデータによれば 1コロナの影響により外国人の受け入れ数が減っていたところ、2022年5月から増加傾向を見せ、2022年11月の段階では、5月に比べ外国人が3万人も増加している 2。本稿で紹介した造船業や製造業を中心とする根幹産業はいずれも韓国が強みをもっている分野である。第4次産業革命時代を迎え、これらの産業のインパクトに多少の落ち度が生じたとは言え、依然として社会の発展においては重要な産業である。外国人人材の受け入れ作戦で、韓国でこれらの産業が再び賑やかさを取り戻せるか、引き続きフォローしていきたい。

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