韓国・ハイテク産業に550兆ウォンを投資、技術強国を目指す

2023年4月12日 JSTアジア・太平洋総合研究センター フェロー 松田侑奈

先端技術分野を巡るグローバル競争が日々激化する中、韓国政府は、ハイテク産業に「R&D、人材育成、税金控除のフルパッケージ」を用意した。産業通商資源部は3月、尹錫悦大統領が主催する非常経済民生会議で、最先端研究設備支援センターの構築から、人材育成、税金控除等、国を挙げての支援戦略を通じ、半導体、ディスプレイ等の6大ハイテク産業に5年間にわたり550兆ウォンを投資すると明らかにした。

韓国政府は、ハイテク産業の超強大国への飛躍を目標に、①超格差技術力の確保、②イノベーション人材の育成、③地域特化型クラスターの創成、④基盤の強い安定した環境作り、⑤投資特国への進化、⑥通商能力の強化―の6大戦略を公開した。

表 6大ハイテク産業への投資額と戦略
分野 政府の投資額
(ウォン)
戦略 目標
半導体 340兆 半導体メガークラスターの創成、24兆ウォン規模の民間投資を誘致。 世界最大のクラスターと強いインフラで躍進を目指す。
ディスプレイ 62兆 投資支援のため、国家戦略技術として指定。透明・XR(クロスリアリティ)、オートモーティブの3大有望分野を集中支援。 ディスプレイ世界1位を奪還。
二次電池 39兆 技術のボトルネック解消に民官が20兆ウォンを2030年まで投資。核心鉱物関連のグローバル鉱物地図・需給地図を制作。 2030年には世界1位になる。
バイオ 13兆 民間投資を支援、現場ニーズに合わせて人材育成プランを用意。 バイオ医薬品製造能力世界1位になる。
未来自動車 95兆 電気自動車の生産規模を5倍拡大。未来自動車転換特別法を制定。 未来自動車世界TOP3になる。
ロボット 1.7兆 革新技術確保に向け民官合わせて2兆ウォン投資を実現する。規制改善等を通じてロボットがなじみやすい環境を作る。 尖端ロボットグローバル製造国になる。

超格差技術力を確保するため、韓国政府は「韓国版アイメック(IMEC)」を推進すると宣言した。アイメックは、ベルギーに所在する半導体研究・人材育成センターで、最先端技術を保有している。最初のステップとして、韓国は、最先端実証インフラを備えた半導体アイメック構築し、徐々にバッテリー、バイオなど他の先端分野に拡大していく予定である。量子、人工知能(AI)など国家戦略技術の研究開発には、5年間 25兆ウォンを集中投入する見込みである。

イノベーション人材の育成に向けては、大学の自律運営を最大限に尊重し、政府は定員、学期、学科新設等についての関与を最小化すると明かした。その代わり、「国家尖端戦略産業特性化大学・大学院」を指定して、企業が求める融合型人材の育成に注力するとした。理工系の優秀人材を海外に送り込む新事業も推進するとした。

更には、全国各地に15のハイテククラスター(計4,086万㎡)を指定し、大学・企業・研究機関が集中するグローバルモデル地域を多く構築する予定と明かした。15のハイテククラスター以外にも国家戦略尖端産業特団地、企画発展特区等が新たに指定される見込である。産業通商資源部長官は、「半導体クラスターに入る企業には、取得税・財産税の減免、認可手続きの最小化等のメリットを賦与する。また、国家尖端戦略産業の特化団地の容積率は通常の1.4倍となる」と述べた。

それから、世界一投資しやすい投資特国の構築に向け、投資税額控除を大幅に拡大するとした。租税特例制限法改正案によれば、国家戦略技術に関わる大企業・中堅企業の税金控除率は現況の8%から15%に、中小企業は16%から25%に調整される。ここに2023年に限って、臨時投資税金控除が導入され、更に10%の追加控除が行われる。

表 投資税金控除はどう変わるのか
大企業 中堅企業 中小企業 2023年限定増加分
一般 1%⇒3% 5%⇒7% 10%⇒12% 3%⇒10%
成長が見込める・産業基盤技術 3%⇒6% 6%⇒10% 12%⇒18%
国家戦略技術 8%⇒15% 8%⇒15% 16%⇒25% 4%⇒10%

2023年7月からは、認可・許可にかかる日にちが60日に制限される。国土交通部長官は、「このような制限を設けたのは、ハイテク産業には、スピードとタイミングが全てだからである。今後は、シンガポールのテマセクのような政府が所有する投資会社の設立も考案している」とした。

通商能力強化に向けては、インド太平洋経済枠組み(IPEF)や鉱物安全保障ナーシップ(MSP)等を通じ、国際協力を強化するとともに、産業技術保護法の改正を通じ、核心技術流出を防ぐとした。

韓国は、尹政権が国政課題で挙げた選択と集中戦略の通り、先端技術分野への投資を集中・拡大させている。人材育成でも契約学科を全国各地で増設するなど、実務人材の育成が最主要目標となっている。ハイテク企業には、これ以上ないと言っても過言ではないほど良い政策環境を与えられている。韓国は、目指しているハイテク産業の超強大国になれるのか。これらの歩みをフォローしていきたい。

上へ戻る