太平洋島嶼国と初の首脳会議開催 韓国

2023年6月13日 JSTアジア・太平洋総合研究センター フェロー 松田侑奈

5月29~30日、「共同繁栄に向け:太平洋協力の強化」と題して、韓国―太平洋島嶼国(とうしょこく)首脳会議がソウルで開催された。尹錫悦政権にとって初となる国内で対面開催をする首脳会議である。会議には、太平洋諸島フォーラム(PIF)1の10の会員国(フランスの海外県も含むと12の会員国)の首脳と5カ国の副総理や長官、PIF事務総長が参加した。各国の首脳は、①韓国―太平洋島嶼国の協力現状と未来の発展方向、②地域情勢と国際舞台での協力、という2つの議題を巡り意見交換を行った。

尹大統領は、「自由、人権、法治等の普遍的な価値を共有している韓国が、平和、民主主義のビジョンを共有する太平洋諸島国とお互い尊重・信頼を基盤に、継続可能な協力関係を築いていくことを願っている」とし、「太平洋島嶼国は、韓国の『自由、平和、繫栄のインドー太平洋戦略』推進において、極めて大事な協力パートナーである。我々は『2050年ブルー太平洋大陸戦略』における方向性が一致しており、ウィンウィンできるパートナーシップを構築すべき」と強調した。

韓国は、政府開発援助(ODA)及び韓国―PIT協力基金の増額、各国の事情に合った開発事業への積極的な協力を約束した。気候変動による被害が多い太平洋島嶼国に必要な技術開発支援を行い、被害を最小化できるよう最善を尽くすとした。また、太平洋島嶼国との教育・研修プログラムを全て「韓国―太平洋島嶼国力量強化事業」に統合し、支援人力を3倍に拡大するとした。支援の約束とともに韓国は太平洋島嶼国に、カーボンニュートラル博覧会への関心と支持、太平洋の平和を脅かす北朝鮮のミサイル発射への適切な対応を呼びかけた。

太平洋島嶼国は、韓国の経済発展のノウハウの共有や技術開発における支援に大きく期待していると明かした。

この会議を通じて、韓国と太平洋島嶼国は、「2023年韓国―太平洋島嶼国は首脳宣言文:回復力のある太平洋の自由、平和、繫栄のためのパートナーシップ」を締結した。また、継続発展を主要内容とする「自由、平和、繫栄の太平洋のための行動計画」も合わせて公開した。

なお、今回の首脳会議を機に、韓国はニウエと国交を樹立した。これで韓国は14の太平洋島嶼国全てと国交を樹立したこととなる。

尹政権は日本を含む諸外国との国際交流や協力に積極的な姿勢を見せている。アメリカ、日本、アラブ首長国連邦(UAE)に続き太平洋島嶼国まで、韓国の外交戦略は世界の注目を集めている。戦略・政策も方向性がはっきりしないとの指摘も受けてきた尹政権だが、就任1周年を迎え少しずつ安定した国政運営の姿を見せている。尹政権の「セールス外交2、価値/人権外交」は、狙い通りに韓国外交の新しい歴史を作ることが可能であるか。今後の外交戦略を引き続きフォローしていきたい。

上へ戻る