韓国―ベトナム、2030年まで交易額1,500億ドル目指し経済協力を強化

2023年7月11日 松田 侑奈(JSTアジア・太平洋総合研究センター フェロー)

韓国の尹錫悦政権の積極的な外交が続いている。韓国の副総理兼企画財政部長官とベトナムの企画投資部の長官は6月23日、「韓国―ベトナムの対外経済協力基金(EDCF)・経済協力増進資金(EDPF)を通じた経済協力に関するMoU(了解覚書)」を締結した。

EDCFとEDPFは発展途上国の経済と産業発展を支援するために、発展途上国に長期・低金利で貸す資金である。韓国政府は、EDCFとEDPFを通じベトナムに40億ドルを支援することにした。

また尹大統領は、韓国とベトナムが昨年、修交30周年を迎え、両国が「包括的戦略パートナー関係」に発展したことを強調しつつ、今後もインド太平洋地域の自由・平和・繫栄に両国が多く貢献できるよう、強力関係を強化していきたいと述べた。

両国は6月23日、「包括的戦略パートナー関係移行への行動計画」を採択し、まずは外交・安全保障の分野における戦略的強力を強化することに合意した。更には、2030年まで交易額1,500億ドルを目標に、経済協力を強化し、両国における投資と貿易が増え続けるよう最善を尽くすとした。

2015年、韓国とベトナムは、原産地証明書電子交換システムを開設し、企業の輸出入の利便性が大きく向上した。その経験を活かし、今回は「核心鉱物供給ネットワークセンター」を設立し、レアアースの開発でも協力基盤を構築していくことにした。両国は今後、LNG発電、水素生産、スマートシティ、気候変動分野でも協力の可能性を模索するとした。

尹大統領は「これから両国の未来を担う若い世代の交流推進のため、ベトナム内の韓国語教育に対する支援と、奨学生の招聘等、交流事業も順次拡大していく予定である。また、2024~2027年までベトナムに2億ドル相当の無償援助を行う予定であるが、気候変動、ヘルスケア、教育、デジタル社会への転換等に使われると思う。韓国―ベトナム科学技術研究院(VKIST)への継続支援とともに、今後10年間3,000万ドル規模で、科学技術分野において、ベトナムと共同研究を推進していく予定である」とコメントした。

ベトナムの積極的な外交は、韓国の「インド太平洋戦略」に関係していると思われる。「インド太平洋戦略」は尹政権の主要な外交戦略の一つであるが、自由、平和、繫栄を3大ビジョンとし、北朝鮮の核問題やサプライチェーンの確保から、尖端科学技術の開発や確保に至るまでの幅広い事項についての国際協力を強調している。韓国は、インド太平洋協力のハブとなり、経済発展の経験を活かして発展途上国を支援することで、イメージ向上も狙っていると思われる。尹政権の積極的な外交が目立つ中、どのような成果に結びつくのか期待が高まる。

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