韓国で行われた研究から、自然風化したマイクロプラスチックは、マウスに有害な神経毒として作用することが分かった。(2023年10月3日公開)
かつては大きなプラスチック製品であったものの、小さな破片となってしまったマイクロプラスチックは、地球と人間の両方の健康を危険にさらすことが証明されている。腐食した小さなプラスチックは、魚、パック詰め食品、中国の長江、さらには人間では血液など、ありとあらゆる場所に侵入する可能性がある。
粒子は自然条件にさらされるとさらに劣化が進む。太陽光、熱、風、波はマイクロプラスチックをさらに化学的・物理的に変化させ、風化マイクロプラスチック (weathered microplastics :WMP) に変え、生態系内での挙動に影響を与える可能性がある。
最近、韓国の研究者たちがWMP と未風化マイクロプラスチック (virgin microplastics :VMP)を比較したところ、WMPを継続的に摂取したマウスは、その脳に重度の炎症と毒性が引き起こされたことが分かった。この研究は、Environment Research誌に発表された。この発表は、自然に変化したマイクロプラスチック汚染物質が健康に及ぼす影響を理解する上での第一歩となる。
チームはポリスチレン由来のマイクロプラスチックを調べた。この物質が現代の産業で重要であり、また、自然環境でよく見られるものだからである。風化プロセスのシミュレーションでは、太陽光と波の影響を模倣して、7日間にわたりマイクロプラスチックに紫外線 (UV) 照射し、物理的ストレスにさらした
風化すると、マイクロプラスチックの粒子サイズと分子量は減少し、表面は質感を持ち、色は黄色に変化し、構造も変化した。マイクロプラスチック粒子は小さいほど分散しやすく、吸収が容易になることから、チームは、WMPはVMPよりも毒性が高いという仮説を立てた。
事実、WMPを7日間経口投与したマウスは、VMPを摂取したマウスと比較して、炎症性タンパク質のレベルが顕著に上昇した。チームは、マウスの脳内で神経変性や細胞死に関連する生物学的経路の発現がほぼ5倍増加していることも観察した。
さらに、脳内の炎症反応の調節に重要な役割を果たすヒトミクログリア細胞株でも実験したところ、炎症反応はVMPよりもWMPに対して重度を示した。
この研究の主導者の1人である大邱慶北科学技術院 (DGIST) のコア蛋白リソースセンターのチェ・ソンギュン (Choi Sungkyun)所長は、「私たちはプロテオミクスに基づく分析を通じて、環境に入り込んだプラスチックは加速して風化し、神経毒性物質として機能する二次マイクロプラスチックに変化し、脳内の炎症と細胞死の増加につながることを初めて特定しました」 と語った。
プラスチック使用の増加により、2050年までに120億トンのプラスチック廃棄物が埋め立て地や自然環境に捨てられると推定されている。
チームは将来、さらに多くのマウス集団と多様なマウス系統を使い、さらに長期的な実験を実施して、仮説を裏付ける多くの証拠を出そうとしている。チームは臓器系内でのマイクロプラスチックの分布メカニズムを理解することの重要性も意識している。