MRガイド下集束超音波 (MRgFUS) による嚢切開術は、脳の問題領域の組織を非侵襲的かつ正確に除去する。(2025年5月9日公開)
韓国の研究チームは、MRガイド下集束超音波 (MRgFUS) 嚢切開術と呼ばれる新しい非侵襲的処置が強迫性障害 (OCD) の治療に役立つ可能性を示した。Molecular Psychiatry誌に掲載されたこの研究によると、治療の効果は最長2年間持続可能である。
OCDを患う人たちは、好ましくない考えや強迫観念を頻繁に抱き、家を絶えず掃除するなど、強迫的かつ反復的な行動をとるようになる。これらの反復行動は、社会的な交流や日常業務の実行に著しく支障をきたすことがある。
中国では、生涯でOCDに罹患する人の割合は約1.6%である。一方、シンガポールでは約3%である。
この症状は一般的な治療では効果がないことが多く、症状が長引いて治療が困難になり、生活の質に大きく影響する。通常、精神疾患に対する非侵襲的治療が効かない場合、脳手術が唯一の選択肢となる。両側嚢切開術や脳深部刺激療法 (DBS) は、重度のOCDを治療する主な手術である。前頭前皮質と視床をつなぐ脳の白質を切截し、あるいは電気刺激を施すことで効果を発揮する。
しかしながら、脳手術は感染や出血などのリスクを高め、近くの脳組織を誤って損傷する可能性もある。
2013年から2014年にかけて、10人の患者がセブランス病院でMRgFUSによる嚢切開術を受けた。彼らは、MRgFUSが重度のOCDに与える有効性について調べる臨床試験の登録者だった。
手術後2年間、患者は同じ薬を服用し続けた。その後、医師は症状に応じて薬を調整した。MRgFUS後、患者は正式な認知行動療法は受けなかったが、以前学んだ認知行動療法のスキルを活用するよう勧められた。
手術後2年間は改善が見られ、その状態は10年後も継続し、あるいはさらに改善した。手術だけでなく、継続的な薬の調整と認知行動スキルの使用が、転帰の改善に寄与したのかもしれない。
10年後、患者の70%が手術によい反応を示し、2人が寛解した。MRgFUSは、ガンマナイフ、高周波 (RF) 嚢切開術、脳深部刺激 (DBS) などの他の手術よりもわずかに優れた結果、又は同等の結果を示した。
ほとんどの患者は手術に満足しており、これはOCD症状の改善状態に関連していた。
研究チームは、他の外科的治療法と比較して、MRgFUSは大きな副作用を引き起こさないため、明らかな利点があると語っている。患者の中には意思決定、問題解決、衝動制御、感情調節などの前頭葉機能の改善が報告された者もいる。
この研究の主任研究者で高麗大学アナム病院のジン・ウー・チャン (Jin Woo Chang) 教授は「これらの研究は、MRgFUSを用いたOCDに関する世界初の臨床試験です。現在の研究は、治療後のOCDに関する世界初の長期追跡研究でもあります」と述べた。
チャン教授は、MRgFUS嚢切開術の適用は、難治性OCDだけに限定されないと考えている。
「MRgFUSは容易であり安全であるため、私たちの臨床試験の結果から、MRgFUSは難治性うつ病などの他の一般的な精神疾患を管理するという潜在的な役割も考えられます」と彼は述べた。