【AsianScientist】 スーパー耐性菌感染症に対抗—「バイオフィルムを破壊する」治療法

この新しいアプローチは、ナノテクノロジー、遺伝子抑制、及び薬剤送達を活用し、抗生物質では治療できないスーパー耐性菌感染症に対抗する。(2025年8月21日公開)

薬剤耐性 (AMR) から発生したスーパー耐性菌と呼ばれる微生物が存在する。これは一般的な感染症の治療を困難にし、時には治療を不可能にする。専門家は、2050年までにAMRが年間最大4000万人の死因となると予測している。経済的な影響は甚大で、医療費は年間約1兆6000億ドルに達すると考えられる。驚くべきことに、現在、病院で発生する感染症の70%以上がスーパー耐性菌に関連している。

特に大きな打撃を受けているのは東南アジア地域である。新しい抗生物質の開発はますます困難になってきているため、医師が耐性感染症と闘うにあたり選択肢は少なくなってきている。さらに悪いことに、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (MRSA) のようなスーパー耐性菌は、既存の抗生物質に耐性を持つだけでなく、治療効果を阻害する厚いバイオフィルムを形成する。

この問題に立ち向かおうと、韓国科学技術院 (KAIST) とイリノイ大学の研究者たちは、協力して新たなアプローチを考え出した。

研究チームは、マイクロバブルと呼ばれる微小な気泡を用いて遺伝子標的ナノ粒子を送達する治療法を設計した。このナノ粒子はバイオフィルムを分解するように設計されており、通常の抗生物質に耐性を持つ頑固な感染症を治療する、有望な新しい方法となる。

研究チームは、MRSAの重要な3つの遺伝子を阻害することを目的として短鎖DNAを開発した。3つの遺伝子とはバイオフィルム形成遺伝子 (icaA)、細胞分裂遺伝子 (ftsZ)、及び抗生物質耐性遺伝子 (mecA) である。チームはこれらのDNA配列を、細菌を透過できる特製ナノ粒子 (BTN) に封入した。強固なバイオフィルムバリアを通過させるために、細菌膜の透過性を一時的に高めるマイクロバブル (MB) も使用した。

この治療法は2段階にかけて機能する。まず、マイクロバブルが圧力変化を引き起こし、バイオフィルムに開口部を作る。次に、ナノ粒子がその開口部を通過し、細菌に DNA を直接届ける。すると細菌は成長、バイオフィルムの形成、抗生物質への耐性を作る遺伝子の働きを止める。

感染したブタの皮膚とマウスの創傷についてこのBTN-MB併用療法を行う実験では、バイオフィルムの厚さが大幅に減少し、細菌数が減少し、炎症が緩和された。

これらの有望な結果は、耐性MRSA感染症と闘う新たな方向を示している。

KAIST生物科学科の主任研究者でもあるヒョン・ジョン・チョン (Hyun Jung Chung) 准教授は「この研究は、既存の抗生物質では治せないスーパー耐性菌感染症に対抗するためにナノテクノロジー、遺伝子抑制、及び物理的な薬剤送達を組み合わせた新たな治療法を示すものです。私たちは全身感染症やその他の様々な感染症に適用を広げることを目指し、研究を継続していきます」と語る。

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