2025年10月15日 安 順花(JSTアジア・太平洋総合研究センター フェロー)
直近5年間の韓国滞在外国人研究人材(研究ビザ(E-3)取得者)のうち、インドと中国出身が全体の60%を占めることが分かった。
研究ビザ(E-3)は、韓国国内の公私の機関から招聘されて研究所などで研究または高度な技術の研究開発に従事する研究者を受け入れるために設けられたビザである。研究分野は先端科学分野、自然科学をはじめ、人文学、芸術・体育分野も含まれる。
韓国法務部によると、2020年から2025年8月まで研究ビザ(E-3)を取得し韓国に滞在する外国人は4629人(複数回招聘された方を含む)である。
国別ではインドが2262人で最も多く、直近5年間の外国人研究人材の流入数の約半分を占める。その次は中国518人である。インドと中国出身が全体の60.1%を占める。ほかに、パキスタン(304人)、イラン(184人)、ベトナム(162人)の順である。
研究ビザの発給件数は2020年639人から2021年1059人へ急増した後、2022年1031人、2023年835人、2024年621人となり、3年連続減少した。2025年は8月まで研究ビザで入国した外国人は444人である。
これに対して、海外からの高度人材が減少している中で、特定国の出身者に偏る傾向を是正すべきという声も上がっている。特に研究ビザの場合、国家科学技術情報へのアクセスが可能であることからセキュリティ観点から対応が必要であるという指摘もある。
韓国政府は米中の技術覇権競争の激化を受けて、国際共同研究の拡大や海外の優秀な人材確保に向けて様々な施策を行っている。昨年法務部は研究ビザの資格要件を緩和した。従来、国外で修士学位を取得した者に求められた研究経験3年以上の条件をなくし、優秀な大学卒業・優秀論文著者の場合、研究歴がなくても研究ビザの獲得が可能になった。また、韓国は2025年に、海外人材の誘致・定着支援業務を総合的に行う海外人材誘致センターを設置した(関連コラム参照)。
海外の優秀な人材を惹きつけることは重要であるが、滞在している外国人人材の国内定着を促進することも課題である。
図1. 「K-STARビザトラック」の概要

(出典:韓国法務部)
韓国法務部では9月、国家の財政支援により育成された海外からの高度人材が国内に定着できるように大学と協力体系を構築する「K-STARビザトラック」制度を施行すると明らかにした。
同制度は、これまで科学技術院など(KAIST、DGIST、UNIST、GIST、科学技術連合大学)を卒業した留学生のみを対象とした「科学技術優秀人材永住・帰化ファストトラック」制度を拡大・改編したものである。「K-STARビザトラック」の参加大学として選定された大学により優秀な人材として推薦された者は卒業後すぐ居住資格(F-2)への変更が可能になる。また永住資格取得までかかる期間を最小6年から最小3年で短縮することができる。
法務部は年末まで審査を経て対象大学を選定する予定であり、これによってこれまで年間約100人程度だった外国人優秀人材(F-2)規模が400人程度へ拡大すると期待している。
大韓商工会議所の報告書によると、韓国の研究人材規模は、2020年55.8万人から2030年51.2万人、2040年43.7万人へ減少すると見込まれる。そのため、高度人材のレベルを維持するには、国内人材の活用度を上げるとともに、海外人材の流入を促進することが今後の大きな課題である。
図2. 韓国の研究人材数の予測(単位:万人)

(出典:大韓商工会議所)