この研究は、PELOTA依存的RNA監視がオートファジーの制御を通じてリボソームの品質管理と寿命を結びつけていることを明らかにした。(2025年12月15日公開)

生物は老化に伴い、細胞内のDNAとタンパク質の質が低下し、これが様々な変性疾患の原因となることが知られている。しかし、老化とRNAの関連性については、これまでほとんど研究されていなかった。
韓国の研究チームはこの研究で、リボソーム関連品質管理因子であり、異常なメッセンジャーRNA (mRNA)を除去するために不可欠なタンパク質PELOTAが、老化を遅らせ寿命を延ばす上で重要な役割があることを発見した。
この発見は米国科学アカデミー紀要に発表された。
すべての生物は、細胞の健康を維持するために、欠陥のあるRNAとタンパク質を除去するシステムを備えている。リボソーム関連品質管理 (RQC) はこのようなシステムの一つである。タンパク質の産生を監視し、欠陥のあるmRNAにリボソームが付着したならば、リボソームは解離・除去される。
RQCは、欠陥のあるタンパク質を分解し、停滞したリボソームを除去し、欠陥のあるmRNA を分解して助けてくれる。RQCが機能しなくなると、欠陥のあるタンパク質やミスフォールドしたタンパク質が蓄積し、神経変性疾患や遺伝性疾患を発症させる。
最近の研究では、RQCは加齢とともにさらに重要性を増していることが分かっている。酵母又は線虫の一種であるC. elegansなどの生物では、たんぱく質合成エラーが増加するとき、細胞が増加の管理に役立っている。しかし、RQCが寿命にどのように影響し、あるいは他の老化関連経路とどのように相互作用するかについては、科学者はまだ完全には解明していない。
チームはC. elegansを用いた本研究で、PELOTAが寿命に不可欠であることを発見した。具体的には、PELOTAを正常な線虫で過剰発現させると、その寿命が長くなった。これは、異常なmRNAを排除するリボソーム関連の品質管理機構が長寿に不可欠であることを示すものである。
本研究は、RQCシステムは栄養状態や成長シグナルを感知して細胞の成長やタンパク質合成を管理するmTORシグナル伝達経路と、細胞が不要物や損傷物を分解し、再利用することで清掃・リサイクル機構として機能するオートファジー経路を同時に調節することも述べている。
PELOTAが少ないと、mTOR経路が異常に活性化され、それがオートファジー経路の抑制につながり、老化プロセスが加速した。一方、PELOTAが活性化されると、mTORの活性が抑制され、オートファジーが促進され、それが細胞バランスの維持と長寿に役立った。
研究チームは、このメカニズムがマウスとヒトの両方で見られることを指摘した。また、PELOTAの欠如が筋肉の老化やアルツハイマー病の発症の原因となる可能性についても語り、加齢に伴う疾患におけるPELOTAの重要性を主張した。
これらの結果から、PELOTA及びリボソーム関連品質管理を調べることは、ヒトの老化や神経変性疾患への対処を目的とした治療法の開発に重要であるという可能性が示される。
この研究は、これまでRNA、特にmRNAがタンパク質合成過程における一時的な中間体と見なされてきた点でも重要である。RNAは安定性に欠けるため、定量的研究や経時的な追跡が困難であり、DNAに比べて生理学的・機能的役割はあまり解明されてこなかった。
韓国科学技術院 (KAIST) 生命科学部の主任研究者である イ・スンジェ・V (Seung-Jae V. Lee) 教授は「品質管理と老化の関連性はDNAとタンパク質の段階で十分に確立されていますが、RNAの品質管理が寿命制御にも機能的に寄与していることを示す分子段階証拠は非常に限られていました」と語る。
また、「この研究は、異常なRNAの除去が老化制御ネットワークの鍵を握るという大きな証拠です」と強く述べた。