【AsianScientist】 大気汚染の悪化により、東南アジアの雨は陸から海へ移動する

韓国の研究者チームは、エアロゾルが海域の降雨量を増大させる一方で、陸地では嵐の発生を遅らせ、東南アジアの気候バランスを変化させていることを発見した。(2026年2月3日公開)

汚染の悪化により、東南アジアでは嵐が陸地から遠ざかり、海上での降雨量が増加している。

バイオマス燃焼、都市汚染、産業排出物はエアロゾルと呼ばれる微粒子を発生させる。エアロゾルは降雨量、雲の形成、大気の安定を大きく変化させると考えられている。現在、韓国の釜山国立大学校の研究者チームが行った新たな研究から、エアロゾルが海洋大陸の降雨パターンに深刻な影響を与えていることが明らかになった。海洋大陸では何百万人もの人々が、水や食料、さらには洪水から身を守るために、安定した降雨に頼って暮らしている。

この研究によると、海洋大陸(インドネシア、マレーシア、シンガポール、ベトナム、タイ、フィリピン、及び周辺海域を含む地域)と東南アジアは、バイオマス燃焼エアロゾルと産業汚染の両方の主な発生源と考えられているが、その原因の大半は急速な工業化と都市化である。

論文筆頭著者であり、釜山国立大学校気候科学研究センター大気科学部のソ・ギョンファン (Kyong-Hwan Seo) 教授は「エアロゾル濃度が上昇すると、降水パターンは陸域優勢型から海洋優勢型へと変化します」と述べる。

この研究では、高解像度大気モデルとNASAの衛星観測を組み合わせ、エアロゾル濃度の上昇が地域の気候バランスを予期せぬ形でどのように変化させているかを明らかにした。

研究の実施方法

エアロゾルが気象に与える影響を理解するため、研究チームはNASAのTRMM衛星データとMERRA-2再解析を用いて2km解像度大気モデルを作り、2011年のマッデン・ジュリアン振動 (MJO) 中のエアロゾル濃度の変化をシミュレーションした。複数のフェーズと年を検証してみたところ、エアロゾル濃度が高いと雨は陸地から離れ、周囲の海域に向かうという一貫した結果が得られた。

汚染が急激に悪化すると、海上では降雨量が最大50%増加する一方で、陸地では降雨量が急激に減少することが分かった。

雨が陸地から海へ移動する理由

研究チームは、この移動はエアロゾルが環境を冷却することにより引き起こされることに気がついた。汚染が発生すると、海よりも陸地の表面の方が強く冷却される。そのため、島々の上空の大気は安定するが、海上の大気は不安定になる。この差が海上の上昇気流と嵐の活動を活発にさせ、陸地から水分を奪い取る。

ソ教授は「エアロゾルは陸地では日中の気温上昇を抑制するブレーキのような役割を果たしますが、海上ではほとんどその役割を果たしません」と説明する。

汚染はまた、この地域の日々の自然な降雨リズムを乱す。陸地で嵐が発生するのは、通常、午後遅い時間であるが、高濃度のエアロゾルがあると降雨のピークは遅くなり、真夜中頃となる。これは、汚染された空気が日中の気温上昇を抑え、熱と水分が蓄積して夜遅くに嵐を引き起こすためである。

実際のところ、高濃度汚染事象として同様の遅延降雨や沖合降雨が観測されている。

予測と洪水対策について重要なこと

この研究結果はnpj Climate and Atmospheric Science誌に発表された。チームはその中で、すでに極端な降雨や洪水に脆弱な地域の中で、気象予測と気候変動回復力は大きな影響を受けていると語っている。

チームは「ジャカルタやマニラのような都市は、短期降雨予測の精度を向上すれば煙害や大気汚染発生時にメリットがあるでしょう。当局は都市洪水への備え、資源配分、インフラや交通機関へのリスク軽減に役立てることができます」と語る。

エアロゾルの影響を気候モデルに組み込むことで、MJO、モンスーンシステム、極端な熱帯降雨の予測精度を向上させることができるかもしれない。この研究は、長期的に見れば陸地での対流が弱まればMJOが海洋大陸をスムーズに移動できるようになり、季節降雨の予測精度が向上する可能性があると述べている。

チームは、これらの研究結果を利用すれば、東南アジア全域の何百万人もの人々にとって、水管理、食料安全保障、そしてエネルギー計画の強化につながる可能性があると語る。

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