【AsianScientist】 セリア触媒内部に潜む酸素の動きを解明

セリアナノ粒子は、サイズに応じて表面での酸素取り込みと内部酸素移動を切り替える。この知見は、特定の反応条件に合わせた触媒設計の新たな手がかりとなる。(2026年6月11日公開)

メタンは、20年間で見ると二酸化炭素の約80倍の熱を大気中に閉じ込める。産業排ガス処理では、金属酸化物触媒に排ガスを通すことで、メタンを二酸化炭素と水に変換して除去する。この過程の中心となるのが、セリウムと酸素からなる化合物、セリア(CeO2)である。セリアは酸素を貯蔵・放出する独自の能力で評価されている。しかし、セリア構造の内部から反応表面へ酸素がどのように移動するのか、その詳しい仕組みは十分に解明されていなかった。

韓国科学技術院(KAIST)とソウル大学校の研究者らは、Nature Communicationsに掲載された研究で、セリアナノ粒子が粒子サイズに応じて2つの異なる酸素移動戦略を切り替えることを明らかにした。

セリアはマーズ・ファン・クレベレン機構によって働く。この過程では、触媒が自らの内部酸素を使って取り込まれた分子を酸化し、その後に空孔を残し、その空孔を再び埋める。セリアは、周囲の気体から酸素を取り込むことでも、結晶構造のより深い部分に蓄えられた酸素を利用することでも、この空孔を補うことができる。これまでの研究では、この2つの補充経路は相互に入れ替え可能なものとして扱われており、両者を切り分けた点が今回の研究の特徴である。

これらの経路を切り分けるため、研究チームはアルミナ担体上に、3.7、5.6、7.3ナノメートルの孤立したセリアドメインを含む触媒を設計した。白金は単一原子に限定し、白金が独自に酸素を活性化するのを防いだ。これにより、観察された化学変化がすべてセリアだけに起因することを確認できた。

研究チームは、一酸化炭素酸化実験、環境圧X線光電子分光法、酸素同位体トレーシングを用いて各触媒を調べた。酸素同位体トレーシングは、生成物分子に取り込まれる酸素が気体由来か結晶由来かを追跡する手法である。

実験の結果、小さなセリアドメインと大きなセリアドメインは、周囲の酸素濃度に応じて異なる挙動を示すことが分かった。酸素が豊富な条件下では、3.7nmの触媒がより大きな粒子を上回り、セリア表面1平方メートル当たり1.5マイクロモルの気体酸素を取り込んで空孔を素早く埋めた。一方、酸素が少ない条件下では、7.3nmの触媒が表面下層から酸素を外側へ移動させることで優位に立った。分光測定でも、高温下で結晶のより深い部分から酸素が引き出されることが確認された。要するに、小さなドメインは短距離走者のように空気中の酸素を素早く取り込み、大きなドメインは長距離走者のように内部の蓄えを着実に利用する。

シミュレーションにより、この違いには単純な構造上の理由があることが明らかになった。小さなドメインは配位していない表面部位の密度が高い。これは、入ってくる酸素分子が着地しやすい表面の隙間に相当する。これに対し、大きなドメインではこうした部位は少ないものの、表面酸素が枯渇するにつれて外側へ移動する、より深い表面下の貯蔵部位を備えている。

「今回の研究は、触媒内で酸素がどのように働くかに関する2つの中核的な仕組みを初めて明確に区別したものです」と、KAIST化学生物分子工学科のヒョンジュ・リー(Hyunjoo Lee)教授は述べた。

研究者らはこれらの知見をメタン酸化に応用した。メタン燃焼は酸素が豊富な条件で進むため、3.7nmドメインが優れた性能を示すと予想され、実際により大きなセリア系触媒より低い温度で高いメタン転化率を達成した。

重要なのは、この性能上の優位性が、産業環境で通常は触媒活性を低下させる湿潤条件下でも維持され、しかも必要な貴金属量が大幅に少なかった点である。

今回の研究は、触媒性能が材料に貯蔵できる酸素量だけでなく、酸素が材料内をどれだけ効率よく移動するかにも左右されることを示した。

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