2021年04月
トップ  > 韓国科学技術ニュース> 2021年04月

アルゴリズムが美術の常識を覆す

アルゴリズムは、過去5世紀にわたる風景画の構図が驚くことに類似していることを教えてくれた。そこには選択バイアスがあることも示唆。

AsianScientist - 韓国の科学者らが開発したアルゴリズムが、西洋の風景画の変遷を解明した。米国科学アカデミー紀要に発表されたもので、絵画の構図に対する美術の学芸員のバイアスを示唆している。

ヴィンセント・ヴァン・ゴッホのような過去の巨匠と、チームラボのような現代のビジョナリーのどちらがあなたの好みであるとしても、美術が社会の集合的記憶の一部であることは疑う余地がない。写真がそうであるように、モナ・リザなどの傑作だけでなく、バンクシーのグラフィティも、一般的な生活様式の概観について時空を超えて伝えている。

韓国科学技術院(KAIST)のHawoong Jeong教授(統計物理学)は「美術史家の間で語られる本質的な疑問として、美術に文化と時間を超える組織的な原理があるのか、もしそうなら、その原理はどのように時間と共に変化してきたのか、というものがある」と説明する。

この疑問に答えるために、Jeong教授と韓国、エストニア、アメリカの共同研究者らは、15,000点近くの風景画をコンピュータのアルゴリズムで処理した。このアルゴリズムは、16世紀のルネッサンス美術から現代美術までの絵画を、横と縦の線で段階的に分割し、異なる作風の画家がどのように名画を構図したのかについての洞察を与えた。

研究チームは、全ての絵画は横か縦の特徴に分割でき、下記のような4つのカテゴリーに分けられることを突き止めた。それによると、横・横タイプ(注:下記A, H-H Type)の絵画は、文字通り圧倒的に横向きの要素で特徴づけられる。横・縦タイプ(同B, H-V Type)の絵画には横向きの要素が支配的な中、作品中には縦向きの要素も散りばめられている。そのほか、横・縦(同C,V-H Type)や縦・縦(同D,V-V Type)タイプがある。

絵画はアルゴリズムにより4つのカテゴリーに分類された(提供:Hawoong Jeong教授)

Jeong教授らの研究チームがカテゴリーの変遷を調べたところ、19世紀半ばまでは横・縦タイプの絵画が一般的であった。それ以降は、横・横タイプの絵画が横・縦タイプの人気を上回るようになったという。

研究チームはまた、絵画の中で空と地面を分離する横線がどのように変遷してきたかについても注目した。16世紀には、この横線は通常キャンバスの中央に位置していたが、17世紀に入ると、キャンバスの下半分に徐々に移動したことが判明。それ以降、この線はまた上昇した。

アルゴリズムは驚くことに、これらのパターンの変遷は異なる文化や芸術運動を反映していることを明らかにした。Jeong教授によると、これは、WikiArtとWeb Gallery of Artから得られた、精選されたデータセットにある選択バイアスを示唆しているかもしれないという。

Jeong教授は「過去数十年間、美術史家らは、美術表現の変遷には大きな多様性があるという主張をしてきた。この研究は、現在利用できる大規模なデータセットが深刻なバイアスを永続化させている可能性があるという警告になる」と語る。

今後、研究チームはこのアルゴリズムを映画、建築、タイポグラフィという他の形にも応用することを検討している。そのほか、対角線を含む構図や、西洋以外の美術作品も調べられるとしている。

上へ戻る