韓国の浦項工科大学校(POSTECH)は5月11日、爆発の危険が少ないリチウム金属電池を作成するための保護膜の開発に成功したと発表した。研究の成果は Energy Storage Materials オンライン版に掲載されている。
リチウム金属を使用した電池のアノード(負極)は、高いエネルギー密度を達成できる一方で、炭酸塩の電解質に対する反応の高さから急な爆発等を起こす危険があり、安定性の低さが課題となっていた。同大学科学部のパク・スジン(Park Soojin)教授、イ・ジョンイン(Lee Jung-In)博士らによる研究チームは、ミセル(微結晶性粒子)の保護膜を用いて、イオン電導性が高く、かつリチウム金属と電解質との接触を防ぐことができる固体の電解質界面を開発した。保護膜は従来の電池生産工程を変えない、シンプルな方法で製造できる。この技術と一般的な炭酸塩の電解質を使用した電池は、高温環境で100サイクル以上安定して高いエネルギー効率を維持した。
パク教授は、リチウム金属アノードの商用化を妨げていた安定性の低さを、この研究により解決できたとしている。今後はパウチ型電池等、さまざまな領域に活用でき、高温でも安定して機能するリチウム金属電池システムの実現が期待できるという。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部