韓国の基礎科学研究院(IBS)は4月14日、同院のナノ医療センターと日本、ドイツの研究者が、単一のフラーレンC60分子が形成される過程を動画で撮影することに成功したと発表した。
チームは収差補正機能付きの透過型電子顕微鏡(aberration-corrected transmission electron microscopy)を使用し、「単分子原子分解能実時間電子顕微鏡法(single-molecule atomic resolution real-time electron microscopy: SMART-EM)」という手法により観察と動画撮影を行った。実験ではトルキセン誘導体(C60H30)をグラフェンに固定して最大8万ボルトの強力な電線を照射し、脱水素環化(cyclodehydrogenation)という化学反応によりC60を形成した。発表された動画には、平らなC60H30がサッカーボールのような球体のC60へと変換される様子が動画に収められた。
写真提供:いずれも韓国・基礎科学研究院(IBS)
単一の分子が別の分子に変換される過程を実空間・実時間的に解析し、動画に収めた研究はこれが初めてであり、ナノスケールの化学過程を解明するうえで大きな進歩となる。研究チームは今後、液体媒体の解析等のより幅広い領域にSMART-EM技術を応用することを計画している。また今回の成果は、ナノマテリアル化学や生物医学の研究、電子線リソグラフィを用いたナノ材料合成方法の開発等にも役立つと期待される。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部