韓国の浦項工科大学校(POSTECH)は6月21日、ハロゲン化物ペロブスカイトを用いた、非常に高速なスイッチングが可能なメモリを開発したと発表した。研究の成果は6月11日に Nature Communications に発表された。
資料提供:POSTECH
抵抗変化型メモリ(Resistive switching memory)は、構造が単純で消費電力量が小さいことから、次世代のメモリとして期待されている。材料候補として研究されているさまざまな化学物質の中でも、ハロゲン化物ペロブスカイトは、動作電圧の低さとオンオフ比の高さによって注目を集めているが、スイッチング速度の低さが難点だった。
今回の研究では、POSTECHの研究チームが、第一原理計算と実験的検証を組み合わせた手法を用い、ハロゲン化ペロブスカイトを材料とする超高速なメモリ素子の開発に成功した。合計696種類の候補化合物から、最適な材料候補として二量体構造のCs3Sb2I9を選び、これを用いたメモリ素子を作製して計算結果を検証した。このメモリは、これまで研究されてきた層状構造のCs3Sb2I9と比較して100倍高速なスイッチング速度(20ナノ秒)で動作した。さらに、多くのペロブスカイト材料で使用されており、環境への悪影響が懸念されている鉛(Pb)を使用していない点も画期的である。
研究チームを率いた材料科学・工学科のイ・ジャンシク(Lee Jang-Sik)教授は、本研究について「超高速なスイッチングが可能な抵抗変化型メモリの開発に向けた重要な一歩」とし、「計算と実験的検証に基づいた新たなメモリ素子材料の設計」を可能にするものであると期待を表明した。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部