韓国の浦項工科大学校(POSTECH)は関節リウマチ等の炎症部位に注射して炎症の原因をピンポイントで取り除く、「ハイブリッド型」ハイドロゲルを用いた治療法を開発した。8月17日付の発表。この研究の成果は、学術誌Advanced Materialsに掲載された。
一酸化窒素(NO)の過剰産生は、痛みを伴う炎症を引き起こし、症状を増悪させる原因になる。これまでもNOを除去する(NO-Scavenging)ハイドロゲルが開発されてきたが、炎症部位に直接注射することが困難であるか、注射された薬剤が他の部位に移動する恐れがあった。他の部位でNOが枯渇すると、副作用を引き起こす可能性がある。
一酸化窒素(NO)消去機能と薬物放出機能を持つ「ハイブリッド型」ハイドロゲルを用いた関節リウマチの治療法の組み合わせ(提供:POSTECH)
そこでPOSTECH化学科のキム・ウォンジョン(Kim Won Jong)教授と博士候補のキム・テジョン(Kim Taejeong)氏は、韓国の医薬品開発企業オムニアメッド(OmniaMed )と共同で、注射により関節リウマチの炎症部位に薬剤を届け、局所的に作用して副作用を起こさずにNOを除去する「ハイブリッド型」のハイドロゲルプラットフォームを開発した。2本のシリンジを合わせた注射器で2種類の注射液を同時に注射すると、これらが注射部位で即座に混合されてハイドロゲルとなり、過剰産生されたNOを集めて除去する。
このハイドロゲルに抗炎症薬のデキサメタゾンを加えて関節リウマチを患う動物モデルに注射したところ、炎症症状が有意に軽減したという。
キム教授はこのハイドロゲルシステムについて「現在販売中または臨床試験段階の治療薬に応用し、さまざまな炎症性疾患の治療に活用できる可能性がある 」と語った。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部