韓国の浦項工科大学校(POSTECH)の研究者が、被曝リスクなしにリンパ節へのがんの転移状態を検査できる光音響測定器を開発した。9月3日に発表。研究の成果は学術誌 Photoacoustics に掲載された。
乳がんや悪性黒色腫(メラノーマ)の転移状態を調べる従来のセンチネルリンパ節(sentinel lymph node: SLN)生検では、SLNを見つけるためにラジオアイソトープを用いるため、患者や医師の放射線被曝が避けられない。また、放射性物質を取り扱う専用施設で検査を行う必要がある。
POSTECHの電気工学・コンバージェンスIT工学・機械工学科のキム・チュルホン(Kim Chulhong)教授らが率いる研究チームは、固体色素レーザー(solid-state dye laser)と透明超音波トランスデューサー(transparent ultrasound transducer)を備えた、片手で持てるサイズの光音響測定器を開発した。従来のSLN生検法と異なり被曝リスクがなく、特別な設備も必要としない。さらに繰り返し使用できるため、コスト効率に優れている。
色素で染められた部位にレーザーが照射されると、光音響信号が発生し、超音波トランスデューサーにより検出される。透明な超音波トランスデューサーを用いることにより、レーザーとトランスデューサーを同軸上で接続 したコンパクトな測定器を実現できたという。
キム教授は今回の研究について「放射性物質を用いずにSLNや悪性黒色腫を特定するうえで、大いに役立つ可能性がある 」と語った。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部