2021年12月
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がん幹細胞を標的、転移と再発を防ぐ薬物送達システムを開発 韓国・高麗大学校

韓国の高麗大学校(Korea University)は10月19日、同校理学部化学科のキム・ジョンスン(Kim Jong-seung)教授と協成大学校(Hyupsung University)のハン・ジユウ(Han Ji-you)教授が率いる共同研究チームが、がん幹細胞を標的とする分子治療の薬物送達システム(drug delivery system)を開発したと発表した。研究成果は学術誌 Journal of the American Chemical Society の表紙論文として掲載された。

がん幹細胞は既存の化学療法ではすべて除去することが困難であり、治療後に少量でも残存していると、転移または再発する可能性がある。

キム教授は「低酸素の微小環境に存在するがん幹細胞を標的とし、がんの転移と再発を防ぐ小分子薬物送達システムを開発した」と語る。今回の研究成果は、がん幹細胞の標的治療と除去に関する今後の研究につながると期待されている。

研究チームは、低酸素状態の微小環境におけるがん幹細胞の生存と炭酸脱水酵素IX(carbonic anhydrase IX: CAIX)の過剰発現に注目し、CAIXを阻害するアセタゾラミドを分子プラットフォームに導入した。その結果、搭載した治療薬(therapeutic payload)がナノモル(nM)レベルの濃度でも、毒性を生じることなく、腫瘍開始(tumor-initiating)特性とがん幹細胞数を効果的に減少させることを確認した。

この新しい治療薬をヒトの乳がん細胞株を用いた異種移植動物モデルに投与したところ、腫瘍量が対照群と比較して有意に減少した。また、がん幹細胞の自己複製能と幹細胞性に関連する遺伝子の発現が抑制されたという。

キム教授は、「今回の成果を基に、今後、この薬物送達プラットフォームを用いたがん幹細胞のイメージングやアポトーシス戦略に関する研究が行われると期待している 」と語った。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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