韓国科学技術院(KAIST)は2月22日、数理モデルにより、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するワクチン接種率が高い集団では、感染率(transmission rate)が高まるにつれて重症者数が減少することが分かったと発表した。この研究の成果は健康科学分野のプレプリントサーバーmedRxiv で公開されている。
このモデルはCOVID-19がパンデミック(世界的大流行)からエンデミック(地域内で繰り返し発生する病気や感染)に移行する時期に関する手掛かりを提供している。
(提供:KAIST)
KAISTのキム・ジェキョン(Kim Jae Kyoung)教授とシン・ウィチョル(Shin Eui-Cheol)教授が率いる研究チームは、感染者数の変化が、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)が軽症の呼吸器疾患ウイルスとして定着するまでの過程に及ぼす影響を予測する数理モデルを解析した。
チームはSARS-CoV-2に対するヒトの免疫応答を、短期的な中和抗体応答と長期的なT細胞免疫応答とに分け、それぞれを数理モデルに適用した。
その結果、ワクチン接種率が高い環境では、感染率が増加した場合に感染者数は一時的に増加する可能性があるが、重症者の割合は最終的に低下することが示された。すなわち、COVID-19がより早く、軽症の呼吸器疾患として定着することとなる。
感染者数が急増する状況には、ソーシャルディスタンス対策の緩和や、オミクロン株のような感染速度が速い変異株の発生が考えられる。
シン教授は「韓国でもオミクロン株の感染者が急増しているが、現状を恐れるよりも、科学的手法を将来の予測や政策に活用することが重要だ」と語った。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部