韓国の基礎科学研究院(IBS)の研究者らは、量子技術を用いたバッテリー(量子バッテリー)で充電速度を向上させる方法を開発し、達成可能な充電速度を突き止めた。3月23日付発表。この研究の成果は米国物理学会(APS)の学術誌 Physical Review Letters に掲載され、「Editor's Suggestion」に選ばれた。
量子バッテリーの概念は2012年に初めて提唱された。その理論は、もつれ(entanglement)等の量子リソースを利用して、バッテリー内の全てのセルを「集団(collective)」的に同時充電し、充電速度を劇的に向上させるというものである。 この集団充電が従来の「並列充電(parallel charging)」に対して持つ優位性を高める方法として2つの可能性が考えられていたが、充電速度の向上に限界があるかどうかは明確にされていなかった。
研究チームは今回、この優位性を高める唯一の方法は「global operation (全てのセルが他の全てのセルと同時に会話する)」であることを示し、これを利用したバッテリーの設計方法も明示した。
現行の電気自動車(EV)と、量子バッテリーを搭載した未来のEV (today's electric vehicle versus the future vehicle based on quantum battery technologies) (提供:IBS)
さらにチームは、この設計によって達成できる充電速度を明確に定量化した。例えば、約200個のセルを含むバッテリーを搭載した典型的な電気自動車(EV)でこの量子充電を行った場合、従来のバッテリーと比較して充電を200倍高速化できる。自宅充電では充電時間を10時間から約3分に、高速充電ステーションでは30分から数秒に短縮できる可能性がある。
研究者らは、この量子充電は広範な影響を及ぼし、EVや消費者用電子機器にとどまらず、核融合発電にも利用できる可能性があるとしている。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部