2022年06月
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カオスと熱平衡化を分類する新たな枠組みを提唱 韓国IBS

韓国の基礎科学研究院(IBS)は4月5日、同院の研究チームが、多数の構成粒子を持つ複雑系(complex system)における弱いカオス(weakly chaotic)のダイナミクスを特徴づける新たな枠組みを提唱したと発表した。この研究の成果は学術誌 Physical Review Letters に掲載された。

カオス系では、初期状態のわずかな違いが劇的に異なる結果を生むことがある。物理系のダイナミクスを支配する自然の基本法則は非線形であり、しばしばカオスとその結果としての熱平衡化(thermalization)を生じさせる。

一方、弱いカオス系は数百万年にわたって非常に規則正しく周期的なダイナミクスを示すことが1950年代にコルモゴロフ(Kolmogorov)、アーノルド(Arnold)、モーザー(Moser)によって発見されており、これに基づいて太陽系等の安定性が説明されている。しかし、多数の構成粒子を持つ系がどうなるかについては解明されていなかった。

研究チームは、量子コンピューティングに基づくモデルを用いてカオスをシミュレーションすることで、熱平衡化が劇的に減速する際の時間と長さのスケールを特定し、系内のダイナミクスを分類した。

(提供:IBS)

論文の筆頭著者であるメラブ・マリシャヴァ(Merab Malishava)氏は「従来の手法では多義的な結果が生じる可能性があったが、一義的な時間スケールであるリアプノフスペクトル(Lyapunov spectrum)を用いることでこの問題を克服した」 と語った。

この研究成果は基礎的な面で興味深いだけでなく、量子コンピューターで必要とされる熱平衡化のない状態を実現するための手がかりになると期待されている。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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