韓国の浦項工科大学校(POSTECH)の研究チームが、米ハーバード大学医学大学院(Harvard Medical School)の研究者と共同で、損傷した肩の回旋筋腱板(腱板)を再建できる複合的な組織構築基盤(tissue platform)を開発した。6月2日付け発表。研究成果は学術誌 Bioactive Materials に掲載された。
腱板(肩の関節を安定させる筋肉)は加齢とともに損傷しやすくなるが、損傷した腱板を再生することは困難とされていた。今回の研究成果は、腱板損傷による慢性的な肩の痛みに苦しむ人々にとって希望の光となる可能性がある。
組織特異的な細胞外マトリックスバイオインクを用いて、3Dバイオプリンティングにより作製されたこの基盤は、腱板の複雑な構造を正確に模倣できる。
(提供:POSTECH)
チームは腱板の全層が断裂したラットにこの構築基盤を移植し、ラットの組織が再生され肩の機能が回復することを確認した。また、近赤外蛍光イメージングと組織特異的なバイオイメージング剤とを組み合わせた手法により、動物モデルにおいて解剖学的変化と再生過程をリアルタイムかつ非侵襲的な方法で観察することに成功した。
この基盤を用いた治療は患者の肩の機能を回復させ、大きな利益をもたらすと期待される。特に自分の組織を用いた腱板再建が行えない患者に、個々に応じた治療選択肢を提供できる可能性がある。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部