韓国科学技術院(KAIST)は、中国の武漢大学(Wuhan University)、深圳大学第一附属病院(First Affiliated Hospital of Shenzhen University)の研究者らと共同で、バクテリオファージ(ファージ)への耐性を持つ大腸菌( Escherichia coli )株を作成するための、ゲノム工学に基づくシステマティックな方法を開発した。
ファージ感染への解決策を提示し、代謝工学と発酵工業に大きな進歩をもたらしたこの研究の成果は、2022年8月に学術誌 Nature Communications に掲載され、編集者の注目記事(Editors' Highlights)として取り上げられた。
発酵工業において、ファージ汚染は宿主となる菌の細胞に破壊的な影響を及ぼし、広範囲にわたって発酵を失敗させる場合がある。このようなファージ汚染に対しては、宿主支配性(Host-controlled)の防御システムを用いた遺伝子工学的な解決策を開発できる可能性があるが、こうした耐性機構の大部分は狭い範囲のファージ感染しか制限できないため、汚染への防御効果は限られる。
(提供:KAIST)
今回の研究では、大腸菌由来の一本鎖DNAホスホロチオエート(single-stranded DNA phosphorothioation)による新たな防御システムと、この防御モジュールをファージのライフサイクルにとって重要な構成要素の変異と同時ゲノム統合(simultaneous genomic integration)する手法を開発した。この手法は、微生物の成長や生理機能に影響することなく、幅広いファージ感染への強力な防御力を宿主に与える。
今回開発された遺伝子工学手法は幅広い大腸菌株で機能することから、ほかの微生物種に応用できる可能性がある。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部