2022年10月
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PPARを活性化する物質を開発、アルツハイマー病治療に道 韓国

韓国の浦項工科大学校(POSTECH)のチームは、転写因子PPARを活性化する物質を開発し、アルツハイマー病治療の可能性を提示した。8月11日付け発表。本研究は、8月2日付の国際学術誌 Neurotherapeutics に掲載された。

最近人気の韓国ドラマ「まぶしくて-私たちの輝く時間-」では、アルツハイマー病を患う主人公に多くの視聴者が注目した。アルツハイマー型認知症は、高齢化社会で増加傾向にある代表的な神経変性疾患である。この病気の患者は、メディアで描かれるだけでなく、私たちの周りでもよく目にする。アルツハイマー型認知症は、正確な原因が不明であり、症状を緩和する治療法しかないため、患者やその家族は苦しみ続けている。

これに対し、POSTECH生命科学科のキム・キョンテ(Kyong-Tai Kim)教授および博士号候補生のオ・ウンジ(Eun Ji Oh)氏は、ペルオキシソーム増殖剤活性化レセプター(PPAR)を活性化する物質を開発し、アルツハイマー病治療の可能性を明らかにした。PPARは、代謝調節に必要な転写因子であり、主に代謝性疾患治療の標的タンパク質として考えられてきた。

研究チームは、肥満、脂質異常症、糖尿病などの代謝性疾患の治療標的として研究が進められているPPARに着目した。研究チームは、仮想計算機スクリーニングと細胞ベーススクリーニングの技術を同時に用いた創薬プラットフォームにより、低分子化合物の開発に成功し、実際のPPARタンパク質との結合を確認することで、PPARを活性化することを実証した。

アルツハイマー病モデルマウスに本化合物を3カ月間経口投与したところ、認知症により低下した記憶力や認知機能が正常なマウスと同程度に回復することが確認された。さらに、アミロイドβ凝集塊の量と神経膠症の程度が減少した。

(提供:POSTECH)

加えて、研究チームは、脳組織の免疫細胞に存在するアミロイドβペプチドによって引き起こされる慢性炎症が有意に減少していることを発見した。さらに、ロー・テヨン(Tae Young Roh)教授は、炎症関連遺伝子の発現が抑制されていることを突き止め、また、慶北大学校薬科大学のソン・イムソク(Im-Sook Song)教授は薬剤が血液脳関門(BBB) を通過して脳組織に伝達することを確認した。

キム・キョンテ(Kyong-Tai Kim)教授はこの研究について、「アルツハイマー病に苦しむ患者さんにとって大きな助けとなるでしょう。将来的には、毒性試験や構造活性相関解析を通じて、アルツハイマー病の治療に最適化した薬剤を開発する予定です」と述べた。

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