韓国の高麗大学校(Korea University)の研究チームが、音響力学的療法(sonodynamic therapy)と免疫療法を組み合わせた、特異性の高いがん治療薬を開発した。8月30日付け発表。この研究成果は学術誌 ACS Nano に掲載された。
音響力学的療法で用いられる音増感剤(sonosensitizer)は、超音波に反応してがんを攻撃する活性酸素種を放出する。しかしこの増感剤は、がん細胞だけでなく正常な細胞でも活性酸素種を生成し、深刻な副作用を引き起こす可能性がある。
今回、研究チームは、音増感剤として知られるメチレンブルーと、免疫賦活作用を持つイミキモドを組み合わせ、新たな免疫・音響力学的(immunosonodynamic)治療薬を合成することに成功した。この物質は、正常な細胞に入っても活性化しないが、がん組織に浸透すると、がん細胞で過剰発現するグルタチオンと化学反応を起こし、有効な音増感剤・免疫賦活剤として機能する。
研究を率いたキム・ジョンスン(Kim Jong-seung)教授はこの研究について、「腫瘍特異的な微小環境活性化システムを用いた免疫・音響力学的療法を開発することの重要性を強調した点で意義がある」と語った。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部