浦項工科大学校(POSTECH)のオ・スンス(Oh Seung Soo)教授が率いる研究チームが、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の進化に対応して性能を高め、すべての変異に強い効果を発揮できる中和剤(neutralizer)を開発した。研究成果は10月26日(米国現地時間)に学術誌 Science Advances に発表された。

SARS-CoV-2が変異を繰り返すたびに感染力を高められる理由は、ウイルスが自身の構造を変化させて、アンジオテンシン変換酵素2(hACE2)受容体との相互作用を強化できるためである。これまでの治療や中和技術では、こうした新たな変異株に即座に対応することができない。

研究チームは、ウイルスとhACE2受容体のホットスポット相互作用(hotspot interaction)の原理を模倣することにより、細胞への感染を抑える革新的な方法を発見した。タンパク質断片(protein fragment)と核酸で構成されるこのハイブリッド型中和剤は、コロナウイルスと強く結合することで、ウイルスとhACE2受容体との相互作用を防ぎ、細胞内へのウイルスの侵入を阻害する。同チームは、独自の試験管内進化(in vitro evolution)技術「Hotspot-Oriented Ligand Display (HOLD)」を用いてこの中和剤を開発した。

この中和剤はアルファ株、ベータ株、ガンマ株、デルタ株だけでなく、最も感染力が高いとされるオミクロン株に対しても優れた中和効果を示した。オ教授は「世界で初めての、自己進化する中和剤の開発プラットフォームを開発したことは意義が大きい」と語った。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部