2022年12月
トップ  > 韓国科学技術ニュース> 2022年12月

メラニン生成を抑制する面照明マイクロLEDパッチ開発 韓国

韓国科学技術院(KAIST)の研究チームが、紫外線によって誘発されるメラニンの生成を抑制する、マイクロLEDを用いた皮膚貼り付け型の治療器を開発した。11月22日付け発表。研究成果は学術誌 Advanced Healthcare Materials の2022年11月号に掲載された。

皮膚の色素であるメラニンは、紫外線や外部ストレスを受けて過剰に生成されると、しみやそばかすの原因になる。近年、このような皮膚疾患を治療するためのLEDを用いた光刺激装置が販売されているが、皮膚に密着させることができないため、光の損失による効率の低さや発熱による安全性の問題があった。

SµLEDパッチの全体コンセプト
a) 人間の皮膚で操作された SµLED パッチ。
b) SµLEDパッチ構造の模式図。
c) 4 × 4 cm2の SµLED パッチ。
d) 効率的な光供給、低発熱、表面照明照射などの SµLED パッチの利点の概略図

今回、研究チームは、数千個のマイクロLEDチップとシリカを組み込んだ光拡散層から成る、柔軟な面照明マイクロLED(surface-lighting microLED:SµLED)パッチを作製した。

ヒト皮膚に似た人工皮膚とマウスの背部の皮膚にSµLEDパッチと従来のLEDで光を照射したところ、いずれの皮膚においても、SµLEDパッチを使用した群では、表皮への光毒性が最小限に抑えられ、従来のLEDを使用した群よりも合成されるメラニンの量が少なかった。

3Dヒト皮膚細胞に対するメラニン形成阻害の有効性
a)α-MSH(メラニン合成を刺激する主要因子)処理細胞の異なる照射条件。
b) 全表皮面積に対する色素沈着面積の比率。
c) 1cm2 サイズの皮膚細胞におけるメラニンレベルの相対分散。分散が小さいということはメラニンが均一に分布していることを、分散が大きいということはメラニンが不規則に分布していることをそれぞれ意味する。
d) 12 日間の実験後の光学画像。スケールバー、1cm。
e) SµLED 照射後のメラニンの最大の減少を示す 3D 皮膚の組織学的分析。スケール バー、20 μ m

マウス背部皮膚におけるメラニン形成抑制効果
a) 20日間の光処理後のマウス背部皮膚の光学画像。
b) マウス背部皮膚の組織学的分析。茶色が少ないということは、メラニン合成に関与するタンパク質/触媒の発現が少ないことを意味する。スケールバー、50 μ m

(提供:いずれもKAIST)

研究チームを率いたイ・コンジェ(Lee Keon Jae)教授は「SµLEDパッチは光効率、信頼性、持続性に優れており、副作用を減らし光治療の効果を最大現に高めることにより、美容分野に大きな影響をもたらすと期待される」と語った。イ教授が設立した企業フロニクス(Fronics)は、SµLEDの技術を用いたマスク型機器を2023年3月に発売する予定。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

上へ戻る