2023年01月
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脳細胞膜の脂質ラフト、水が通過できない過程を生体外で再現 韓国

韓国の高麗大学校(Korea University)は、同大学の研究チームが、脳の脂質ラフト(lipid raft)領域を世界で初めて生体外(in vitro)で再現し、この領域を水分子が通過できないことを実験により観察したと発表した。

脂質ラフトは脳細胞膜に存在する、コレステロールを多く含む領域である。水分子が脂質ラフト内に移動するかどうかを調べるための試みはこれまでも行われてきたが、脂質ラフトは細胞膜にごく短い時間しか存在しないこと等から、その実験的実証は困難であった。研究チームは、脂質ラフトを安定して再現する技術を発明し、水の不透過性をシミュレーションする新たなプラットフォームを開発した。さらに分子動力学シミュレーションを用いて脂質ラフトで水分子の透過性が低下する過程を調べ、水分子の交換が能動的に(actively)起こると細胞膜が破れる過程を実証した。

認知症や狂牛病、糖尿病の発症原因となる接着性のタンパク質は脂質ラフト領域に沈着することから、今回研究された水分子の不透過性の機構は、病原因子と脂質ラフトの相互作用の解析に幅広く応用できる可能性がある。

2022年12月1日付け発表。同大学と韓国科学技術研究院(KIST)が共同で運営する大学院「KU-KIST Graduate School of Converging Science and Technology」のリュ・ヨンサン(Ryu Yong-Sang)教授らのチームによる研究の成果。論文は同年11月11日付けで学術誌 Journal of the American Chemical Society に掲載された。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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