韓国の研究者は、従来とは異なる水処理方法を使用して、太陽電池の電力変換効率を向上させている。
韓国の研究者チームは、脱イオン水が太陽電池の効率を高めるのに役立つことを発見した。韓国の光州科学技術院 (GIST)のDong-Yu Kim博士らは、Advanced Functional Materialsに掲載された最近の研究で、一定量の水を使用すると太陽電池内の有機材料の凝集が防止され、それによって太陽電池の性能が向上することを明らかにした。
有機太陽電池(OSC:Organic Solar Cell)はいくつかの層で構成されており、それぞれが異なる機能を持っている。中間のどこかにポリマーで構成された活性層があり、吸収された太陽光をドナーからアクセプター材料に高エネルギー電子を移動させることによって電力に変換される。
ただし、使用される有機ポリマーの性質上、ドナー及びアクセプターポリマーの両方が凝集して強固な構造を形成する傾向があるため、変換プロセスが効率的であることはほとんどない。この影響を最小限に抑えるために、ポリマーは微粒子が溶解した活性溶液である必要がある。研究者は、脱イオン水を使用してポリマーを分散させることで、それを実現させようと試みた。
チームは、3 つの疎水性ドナー・アクセプターモデルを使用した実験を開始した。チームは、ポリマーの活性溶液をクロロベンゼンに入れ、溶液を攪拌した。攪拌によって攪拌棒付近に渦が発生したが、それだけではポリマーは十分に分散されなかった。次に、研究者は溶液に脱イオン水を加えた。これにより、さらに多くの渦が発生し、分子の分散がさらに促された。
この研究を主導したKim博士は、脱イオン水を加えると「化学反応を引き起こすことなく、必要な物理的変化を引き起こすことができる」と述べた。
水とホスト活性溶液で親水性が異なることにより、それらが分離した。2つの相が完全に分離すると、研究者は水を除去し、スロットダイで活性溶液を薄膜に転写した。「私たちは水処理された活性溶液が、より均一な活性層薄膜をもたらすことを観察した」とKim博士。さらに、活性層の形態は装置の性能と直接相関するため、研究者は水処理OSCと未処理OSCの電力変換効率(PCE:Power Conversion Efficiency)を比較した。水処理したOSCは、対応するOSCよりも高いPCEを示した。
研究者はこの結果に後押しされ、OSCをスケールアップし、水処理しない装置と比較して著しく向上していることを突き止めた。Kim博士は「私たちは10 cm2 の活性領域を備えた大面積OSCモジュールを製作した。これは 11.92%という高い変換効率を示した」と述べ、装置の潜在的なスケーラビリティを強調した。
(2023年01月17日公開)