韓国の基礎科学研究院(IBS)は1月26日、同院の研究者らから成る学際研究チームが、女性の悪性リンパ腫患者において、午後に化学療法を行った場合、午前に行った場合よりも良好な治療結果が得られることを発見したと発表した。研究成果は学術誌 JCI insight に掲載された。
近年、身体が薬の有害な影響を最も受けにくい時間に薬を送達させることを目的とした「時間治療(Chronotherapy)」が関心を集めている。しかし、血液悪性腫瘍の治療における時間治療の価値は明らかにされていなかった。
IBSの数理学者キム・ジェキョン(Kim Jae Kyoung)博士とソウル大学病院(Seoul National University Hospital)のコ・ヨンイル(Koh Youngil)教授が率いる研究チームは、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)のコホートを分析することで、その利益を初めて示した。
210名の女性患者を分析した結果、午後に投薬を受けた患者は、午前に受けた患者と比較して死亡率が12.5倍、60カ月後の再発率が2.8倍低く、好中球減少症等の副作用の発生頻度も低かった。一方、男性患者では治療の時間帯による治療効果の差はみられなかった。研究チームは、血液サンプルの解析に基づき、この性差は骨髄の増殖活性の時間帯による変動が男性よりも女性で大きいことに起因すると推定している。
キム博士は「私たちは患者の睡眠パターンから概日時計の時間を推定する技術を開発しており、がんに対する個別化された時間治療の開発にこれを利用できると期待している」と語った。
化学療法を午後に行うと効果が上がるという
(提供:IBS)
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部