2023年04月
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CAR免疫療法の新技術を開発、固形がん治療にも拡大へ 韓国

韓国科学技術院(KAIST)は3月9日、同院の研究者が率いる共同研究チームが、人工知能(AI)とビッグデータ解析に基づいて設計した「スマートな免疫細胞」を用いて、がんの新たなキメラ抗原受容体(CAR)免疫療法につながる技術を開発したことを発表した。研究成果は学術誌 Nature Biotechnology に掲載された。

KAISTの生物・脳工学科(Bio and Brain Engineering)のチョ・ジョンギュン(Choi Jung Kyoon)教授が率いる研究チームは数百万個の細胞の遺伝子発現データベースを構築し、これを用いて、論理回路を通じて腫瘍細胞と正常細胞の遺伝子発現パターンの違いを検出するディープラーニングアルゴリズムを開発した。この手法により発見された論理回路を組み込んだCAR免疫細胞は、腫瘍細胞と正常細胞をコンピューターのように識別し、副作用を生じさせずに腫瘍細胞だけを攻撃できる可能性があることが示された。

CAR細胞療法はがん細胞を特異的に認識して破壊できる治療法として、血液がんの治療で有望な成果を挙げている。しかし、固形がん治療への応用にあたっては、副作用を最小限に抑えながらがん細胞を効果的に破壊できるCAR細胞の開発が困難とされてきた。

論文の筆頭著者であるクォン・ジュナ(Kwon Joonha)博士は「AIとコンピューターの論理回路を免疫細胞工学に応用する画期的な技術であり、CAR療法を固形がん治療へ拡大することに大いに貢献するだろう」と語った。

図1) CAR 療法を用いたがん細胞に特異的な製造および投与プロセスの概略図

図2) ディープラーニング遺伝子の組み合わせに基づいてデュアルターゲットを選択するアルゴリズム (左) と、論理回路に従い遺伝子の組み合わせによって発現細胞の割合を計算するアルゴリズム (右)
(提供:いずれもKAIST)

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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