韓国科学技術院(KAIST)化学科(Department of Chemistry)のビョン・ヒィエリョン(Byon Hye Ryung)教授とバイク・ムヒュン(Baik Mu-Hyun)教授、浦項工科大学校(POSTECH)化学科(Department of Chemistry)のソ・ジョンチョル(Seo Jongcheol)教授が率いる共同研究チームは3月23日、水系レドックスフロー電池(redox flow battery)で使用するための溶解性と安定性の高い有機レドックス活性分子を開発したと発表した。この研究成果は、Advanced Materialsのオンライン版に掲載された。
研究チームは、水系レドックスフロー電池開発のため、有機分子の再設計に焦点を当てた。有機分子の設計を工夫することで、分子の溶解性や酸化還元電位を制御することが可能となり、今日のレドックスフロー電池に最も広く使われているバナジウムよりも高いエネルギー貯蔵能力を有する活物質の候補を生み出すことができる。
ほとんどのレドックス活性分子は、溶解性や酸化還元反応中の化学的安定性が低い。溶解性が低いとエネルギー貯蔵能力が低くなり、化学的安定性が低いとサイクル性能が低下する。今回の研究で研究チームは、化学的安定性が高いナフタレンジイミド(naphthalene diimide:NDI)を活性分子に選んだ。NDI分子は水にほとんど溶けないが、研究チームは4つのアンモニウム官能基(ammonium functionality)を連結することで、高い水溶性を達成した。
ビョン教授は、「(我々が開発した有機活性分子が)水性レドックスフロー電池に使われるようになれば、高いエネルギー密度と高い溶解性に加えて、中性の電解質で使用できるという利点もある。バナジウムレドックスフロー電池は現在、腐食の原因となる酸性溶液を使用しており、我々が開発した分子がこの問題を解決することを期待している」と語った。
NDI分子の多様な構造(a)ほか
レドックスフロー電池の模式図(a)ほか
(提供:いずれもKAIST)
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部