韓国の基礎科学研究院(IBS)は5月17日、同院の複雑系理論物理学研究センター(Center for Theoretical Physics of Complex Systems)の研究チームが、量子源(quantum source)から抽出できるエネルギーを、現代の技術の能力を考慮に入れて測定する指標を設計したと発表した。研究成果は、Physical Review Lettersに掲載された。
研究チームが開発した指標は、「観測的エルゴトロピー(observational ergotropy)」と呼ばれる。エルゴトロピーとは、あるシステムから抽出できる最大の仕事量を意味する。従来の量子エルゴトロピーの測定指標は観念的で、実験能力が理想である状態を仮定していた。対照的に、新たに開発されたエルゴトロピーは、より現実的な推定を提供し、現代の技術能力に合わせてアップデートするため、現在の実験能力でどのエネルギー源が最も優れているかが分かる。
こうした結果は、例えば、量子バッテリーの実験的な実現に最も適したプラットフォームを判断するのに使うことができる。今回の研究で研究チームは、観測的エルゴトロピーを用いることで、どの量子バッテリーが新しい量子の未来に最も適したエネルギーを供給できるかを判別できることを示した。
研究チームのドミニク・サフラネク(Dominik AFRÁNEK)氏は、「観測的エルゴトロピーは、技術能力の発展に合わせて再計算できる。将来は、新しいエネルギー源が新しい理想とみなされるようになるかもしれない。この指標は、時代を超えて継続的に使用することができ、有望な量子エネルギー源を判断するために使える基本的なツールになることが期待できる」と語った。
(出典:IBS)
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部